特例子会社とは、障害者の雇用促進と安定のため、雇用にあたって特別な配慮をする子会社のことで、認定を受ければ親会社およびグループ全体の障害者雇用分として実雇用率を算定することができます。特例子会社による雇用を考えている企業担当者向けに、制度の概要やメリット、どのような企業が向いているのか、設立までのステップなどについてまとめました。また実際に特例子会社として設立され、事業を行っている当社パーソルチャレンジの事例も紹介します。

(※2021年3月10日更新:厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」令和2年発表の数値に更新しました)

目次

特例子会社とは

障害者雇用の促進と安定を図るため、障害者の雇用において特別の配慮をする子会社のことです。
一定要件を満たし、厚生労働大臣から認定を受けると、特例子会社で雇用された障害者は親会社やグループ全体の雇用であるとみなされ、実雇用率を算定することができます。これが「特例子会社制度」です。

企業グループ算定特例(関係子会社特例)、事業協同組合等算定特例について

特例子会社を設置しなくても、グループ会社の実雇用率の通算が可能な制度があります。それが企業グループ算定特例(関係子会社特例)です。
2009年4月に創設された制度で、一定の要件を満たし、厚生労働大臣から「グループ認定」を受けると、親会社が運営するグループ会社全て(特例子会社・子会社)の従業員が、親会社で雇用しているとみなされるものです。
(ただし認定には前提条件や制約が多いため、この制度を利用する企業は少ないのが現状です)

この他、中小企業が事業協同組合などを活用し、この組合のもとで障害者を雇用する事業を協同で行い、それに対して厚生労働大臣から認定を受けた場合に、事業協同組合と組合員にあたる中小企業の間で実雇用率の通算が可能になる「事業協同組合等算定特例(特定事業主特例)」という制度もあります。

特例子会社による雇用のメリット

特例子会社の設立を視野に入れた時、どんなメリットがあるのか気になるかと思います。
一言で言えば、「法定雇用率の安定達成・維持と、障害者の活躍・戦力化が可能になる」というメリットがあります。具体的なポイントを以下にまとめました。

1. 設備投資や業務・コストを集中させ効率化を図ることができる

障害のある方を、複数の会社や部署に分散して雇用するより、一カ所で雇用・管理することで業務を集約しスケールメリットを生かすことが可能です。
いくつかの部署に分散して雇用すると、障害者に対しての指導員の配置が多くなることや、雇用管理に対するコストが大きくなりますが、特例子会社による雇用の場合、障害者に対する業務や管理、資源配分を一元集中できるので、各部署やグループの他の会社が負担していた施設改修費などのコストを抑えられます。

2. 多様な障害者に合わせた雇用管理や職場環境、人事評価制度の構築が可能

障害のある方を多数雇用する場合、様々な特性に考慮し、雇用条件や配慮、雇用管理を行うことが大切です。特例子会社は親会社とは別に設立するため、雇用管理の仕組みを柔軟に設計したり、必要な配慮を行うための職場環境を構築しやすくなります。また障害の特性や職務能力を前提とした人事評価制度を制定することによって適正な評価やスキルアップの機会を提供することができます。

3. 職場定着率や生産性が向上する

特例子会社ではない一般的な企業で働いている障害のある方は、職場内で孤立してしまったり仕事にやりがいを感じられないなどの理由から、短期間で仕事を辞めてしまうことが課題のひとつとなっています。
特例子会社では、障害のある方が一緒に働いているので、孤独を感じづらい・作業目標を他の同僚と同じレベルに設定できるなどのことから、仕事に対するモチベーションを高く保ちやすくなります。
そのような環境で、上に紹介したような適正な制度や管理の下で業務を続けることで、社員の職場定着率が向上していきます。そして、スキルの向上やリーダーの役割を担う社員が現れたり、より幅広い業務を担えるようになるなど、会社やチーム全体の生産性が向上するというメリットが期待できます。

4. 障害者雇用のノウハウを蓄積、活用できる

特例子会社は、業務創出や母集団形成、採用、雇用管理、人事評価など、障害者雇用における豊富な知識や経験が蓄積されます。それによって、グループ全体の障害者雇用を推進する立場として、親会社やグループ内の別の子会社に助言を行い、活かすことができます。それによって、企業が負っている雇用責任を果たすための主要な役割を担うことができます。

特例子会社の設立を検討している企業で、設立に向けてのノウハウが欲しい時には、こうした特例子会社を見学することもおすすめです。

どのような企業に向いているの?

下記のような企業は特例子会社による雇用を検討すると良いでしょう。

  • 雇用すべき人数が多く、安定就業、定着化を目指す必要がある企業(中・大規模企業、または企業グループなど)
  • 特定の障害だけでなく、一般部署でのサポートが困難な障害者や、多様な障害者を雇用していく必要がある企業
  • 一般部署への配属をこれ以上増やすことが難しい企業
  • 一定割合の業務がある企業(外部にアウトソースしている業務が多い企業など)

例えば従業員規模が1,000人以上の企業で法定雇用率2.2%を達成するためには、単純計算で22人分の雇用を行う必要がありますが、毎年22人分の雇用を同じ配属先や業務、管理手法の中で創出し続けることは簡単ではありません。雇用すべき障害者の数は企業の成長とともに増加するため、継続的に多くの雇用や業務を創出し、かつ安定的に働ける仕組みを構築し続ける必要があります。

特例子会社による雇用状況

特例子会社の認定企業や雇用数は例年、増加傾向にあります。2021年1月に厚生労働省が発表した「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」では、特例子会社の認定を受けている企業は前年度より25社多い542社、雇用されている障害者は前年度より2,144人増え、38,918.5人となりました。
特例子会社による障害者雇用は10年前の2.7倍、全雇用数にしめる特例子会社雇用数の構成比は10年間で1.6倍増加していいます。

また、民間企業の法定雇用率は2021年3月より2.3%に引き上げられたことや、これまで民間企業で雇用が進んできた特定の障害者は“売り手市場”化し、雇用が難しくなっていることから、多様な特性の障害者を雇用する必要性が高まってきています。そのため、規模の大きい企業では、特例子会社のような集合配置型での雇用を進める企業が増えていくと思われます。

特例子会社設立のための条件とステップ

特例子会社を設立するための条件やステップを紹介します。

特例子会社に求められる雇用条件

まず、特例子会社を設立するには、以下の全ての雇用条件を満たす必要があります。

  • 障害者の雇用数が5人以上
  • 当該子会社の全従業員数の20%以上
  • 雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上

<1>認定要件を確認する

特例子会社の設立には、いくつかの要件を満たす必要があります。
下記のうち、1・2が親会社・3~6までが子会社で満たす要件となります。

1. 親会社が子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること
2. 親会社から子会社への役員派遣、従業員の出向など、人的交流が密であること
3. 子会社は株式会社であること
4. 子会社に雇用する障害者が5人以上で、かつ全従業員の20%以上を占めること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の合計数割合が30%以上であること
5. 障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること
6. その他、障害者雇用の促進および雇用の安定が確実に達成されると認められること

<2>申請書類を準備する

公共職業安定所長に提出する「子会社特例認定申請書」や添付書類・確認資料などを用意する必要があります。申請書類を事前にチェックしておくと良いでしょう。

申請書類一覧

様式等 記載内容等
子会社特例認定申請書 公共職業安定所長に提出する書類
親事業主および子会社の概要 親会社と特例子会社の概要などを記載する

添付書類、確認資料の例

様式等 記載内容等
親会社の直近の有価証券報告書(写)または付属明細書(写) 親会社が子会社の意思決定機関を支配していることを示す書類
子会社の株主名簿または出資口名簿 同上
親会社の「障害者雇用状況報告書」 直近の6月1日時点のもの
申請日現在における親会社(当該子会社含む)の障害者雇用状況報告書
定款
法人登記簿謄本
親会社から派遣されている子会社の役員名簿 氏名、年齢、所属、役職、入社年月日(親会社からの主な略歴)
子会社の社員名簿
子会社の障害者受け入れ通知書 個人ごとに雇い入れ条件のわかるもの
子会社の就業規則・給与規定等
障害者の職業生活に関する指導員の配置状況 障害者職業訓練生活相談員の選任届など
子会社の図面、案内図
子会社の勤務中(または実習中)の写真 職場の仕事内容が確認できるもの
その他 子会社が行う事業において障害者雇用促進および安定に関する資料

<3>設立プランを定める

役員に承認を得るために必要な設立プランを作成しましょう。
具体的な企業内容や設立の理念などを決めていくプロジェクトを社内に設け、詳細に作成するようにしましょう。
ハローワークや障害者職業センターでは、相談を受け付けているので、サポート体制も整っています。

<4>定款の作成、認証

続いて定款を作成しましょう。絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項など、それぞれの内容を記載する必要があります。
定款の作成が終了したら、必要書類と共に公証人役場へ持っていき認証を受けます。
定款は、作成や認証が代理人でも可能となっているため、行政書士や司法書士・弁護士などに相談するのも良いです。

<5>会社設立登記申請

設立登記は、出資金の払い込みから2週間以内に、必要書類を登記所に提出し審査を受けます。
審査結果が出るまでには数日かかるので、できるだけ早く動くようにすると良いです。困ったときには、行政書士や司法書士・弁護士がサポートしてくれます。

<6>官庁への諸手続き

会社運営に関係の深い官庁へ届け出をします。届出書類や届出先によって提出期限が違ってくるので、もれの無いよう注意しましょう。

提出先 届出書類 提出期限
税務署 法人設立届出書 設立から2か月以内
税務署 給与支払事務所などの解説届書 設立から1か月以内
税務署 青色申告の承認申請書 設立から3か月以内、もしくは事業年度末のいずれか早い日の前日まで
都道府県税務事務所 法人設立届出書 自治体によって異なる
市町村役場 法人設立届出書 自治体によって異なる
日本年金機構 健康保険・厚生年金保険新規適用届書 適用事業者となったら速やかに提出
日本年金機構 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届書 適用事業者となったら速やかに提出
労働基準監督署 労働保険の保険関係成立届 速やかに提出
労働基準監督署 適用事業報告書 速やかに提出
労働基準監督署 時間外労働時間に関する協定書 速やかに提出
ハローワーク 雇用保険適用事業所設置届 雇入れ日の翌日から10日以内
ハローワーク 雇用保険被保険者資格取得届 採用した日の属する月の翌月10日まで

<7>業務、就業規則、人事評価制度、人材要件

業務内容や就業規則は、雇用を予定している障害がある方に合わせた内容となるよう工夫しましょう。
従業員の賃金・労働時間・休日数・契約期間などを予め決めておくと良いです。

<8>母集団形成、採用選考活動

面接や実習などを行う、採用選考活動を行います。悩んだ場合は、ハローワークの障害者雇用担当者に問い合わせると、従業員の募集~採用までのアドバイスを受けられるので、採用活動をスムーズに行えます。

<9>入社、特例子会社認定申請

障害のある方を採用したら、親会社の所在地を管轄するハローワークで特例子会社の申請をします。
用意した必要な申請書類をもって行きましょう。

特例子会社の事例:パーソルチャレンジ

当社パーソルチャレンジはパーソルグループの特例子会社として2008年に認定を受け、雇用に取り組んでいます。従業員数は2019年4月時点で521名。うち障害者は334名(身体障害88名、知的障害35名、精神障害211名)で、精神障害のある社員が多いのが特徴です。

グループから事務系業務を受託 雇用ノウハウをサービスに展開

パーソルグループは従業員が全体で4万人弱、派遣社員も含めると10 万人を超えます。グループ内には3社の特例子会社があり、特色や業務領域が異なりますが、パーソルチャレンジの特徴はグループの事務業務や広告制作を担うBPOによって、障害のある方の雇用拡大に取り組んでいることです。
これによって障害のある社員が活躍するだけでなく、得られた経験や知見を雇用ノウハウとして、採用活動や、企業や求職者など対外向けのサービスに活かせるという強みを持っています。

<主な業務内容>

  • 100を超えるPCデータ入力業務
  • グループで行っている派遣スタッフの管理業務
  • グループ会社内の名刺情報の一元管理
  • グループ会社が運営している求人媒体に掲載する求人原稿制作
  • 資料の封入・封緘、印刷代行業務

独自のマネジメントや制度構築で安定就業、生産性を向上

製造業で実践されている生産管理・品質管理の概念を導入し、社員一人ひとりへの人材マネジメントと業務マネジメントを徹底して行っています。これによって、安定した質の高い業務を遂行し続けることができ、グループ全体の生産性に貢献しています。
障害のある社員にとっては、働きやすく、やりがいの持てる職場環境で就業でき、業務を通じてグループやチームに貢献することができています。障害のある社員の中には、業務リーダーとなってチームの取りまとめを行う社員もいます。雇用数が増えていく中、職場定着も進んでおり、特に精神障害のある社員の定着率は90%以上を維持しています(2016年4月時点在職者の、入社1年後の在籍割合)。

<雇用のための取り組みの例>

  • 生産管理の仕組みの導入で業務工程を最適化し、必要な能力要件を単純化
  • 業務やマネジメント、コミュニケーションの「見える化」で「働く」に関する不安の解消
  • 全業務にマニュアルとチェックシートを導入し、その活用を常態化
  • 業務マネジメントと障害配慮を統合し、ラインケアで一元的にマネジメントを実施

※当社が日頃から実践しているマネジメントや配慮については、「オピニオン」(精神障害の生産性向上のためのマネジメント・戦力化方法を考える 全3回)や、「コラム 障害者雇用の現場は踊る」(全10回)にて紹介しています。特に精神障害のある社員の安定就業・定着化に活かせる内容となっていますので、ぜひご覧ください。
(「オピニオン」「コラム 障害者雇用の現場は踊る」(第3回~10回)は会員限定ページにて掲載しています。コンテンツの閲覧には、会員登録が必要です)

まとめ:特例子会社の設立準備で検討すべきことは

最後に、これまで特例子会社として自社の雇用を促進しながら、企業に特例子会社設立を含む雇用支援を行ってきた当社が考えるポイントをご紹介します。特例子会社による雇用を検討している方は、参考にしていただければと思います。

1. 設立準備前に、自社の雇用方針と戦略を再確認する

障害者の雇用、就業の形は様々あり、特例子会社による集合配置雇用もその一つです。どのような雇用を目指すのかは、自社の雇用方針と戦略によって異なります。
すでに特例子会社による雇用を前提に考えている企業も、これから検討する企業も、

  • そもそも障害者を雇用する理由の確認
  • 障害者雇用に期待するものは何か(会社に何をもたらすものか)
  • 達成すべき雇用数と、そのための計画(中長期)

を振り返ってみましょう。

その上で、現在の雇用状況を見直し、雇用人数や雇用している社員の属性、配属先、就業状況や定着率、雇用がもたらしている成果などを整理し、特例子会社による集合配置型で雇用を進めるか、または一般部署への配属で進めるのかを改めて整理してみましょう。

2. 設立形態の要件を整理しておく

雇用方針や戦略、現状の確認をするのとあわせ、組織としての特例子会社の使命、ミッションを定め、必要要件を整理しましょう。
法的義務としての雇用率達成は大前提ですが、組織として運営していく上でのコスト(雇用コスト)は発生し、企業の成長に比例して増え続けることになります。組織運営の方針として、雇用コストを必要最低限に抑え続けるのか、またはコスト削減だけでなく、企業全体のCSR活動、ダイバーシティへの取り組みへの影響や、経営面への直接・間接的貢献(業務の効率化、売上・利益貢献など)といったプラスの効果を求めるのか、を定めておく必要があります。

それによって、組織体制や人事部のかかわり方、親会社やグループとして雇用コストはどう負担するのか、創出・受託する業務内容や雇用する障害者の人材要件、雇用後の育成、人事評価制度の整備などの必要要件が変わってきます。

3. ハローワークや支援機関、民間の支援業者に相談する

全国のハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構、地域障害者職業センターで特例子会社の設立準備における相談を受け付けています。設立要件や必要な手続き、設立によって受けられる助成金などについて確認相談してみましょう。

また設立にあたっては、設立計画から行政への各種申請、制度の整備や体制構築を支援してくれるコンサルティングサービスを行っている業者がありますので、利用すると良いでしょう。
当社パーソルチャレンジでも、設立から採用、雇用後の定着までを支援するコンサルティングを行っていますので、お気軽にご相談ください。