障害者雇用の助成金制度

障害者雇用を行うことは、単に法律上の義務を果たすというだけではなく、企業としての信頼度が高まったり、環境や業務見直しのきっかけになったり、職場に多様性が生まれるといったメリットがあります。
企業は、雇用を推進するにあたり、国から様々な助成金を受け取ることができます。
しかし、障害者雇用に関する助成金は種類が多いため、どのようなときにどの助成金を申請できるのかよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、障害者雇用に関するおもな助成金についてご紹介します。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用制度は、経験や技術などが足りないことから就職が難しい求職者の早期就職や雇用機会の創出を目的に創設された制度です。障害のある方には、週の所定労働時間が20時間以上の「障害者トライアルコース」と、10時間以上20時間未満の「障害者短時間トライアルコース」の2種類が用意されています。

障害者トライアルコース

障害者トライアルコースは、将来的に継続雇用(1年を超える期間の雇用)へ移ることを目標として、就職が困難な障害のある方を原則3ヵ月契約で雇用します。その間に求職者の適性や能力を見極め、問題がなければ継続雇用へ、継続雇用が難しいなら3ヵ月で契約満了として雇用を終わらせることができます。

対象となる障害のある方

  • 障害者トライアル雇用によって継続雇用する労働者の雇入れを希望している方
  • 以下の4項目のいずれかにあてはまる障害のある方
    1. 1. 就労経験がない職業に就くことを希望している方
    2. 2. 過去2年以内に離職が2回以上ある方
    3. 3. 離職期間が6ヵ月以上になる方
    4. 4. 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者

※雇用対象者の選考は、書類ではなく面接で行う必要があります。

おもな雇入れの条件

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること

※Web媒体等からの直接採用は対象にはなりません。

受給額

  • 精神障害者を雇用する場合は、受給期間は最長で6ヵ月となっており、最初の3ヵ月は月額最大80,000円、その後の3ヵ月は月額最大40,000円を受け取ることができます
  • 精神障害者の雇用ではない場合、最長3ヵ月で月額最大40,000円となります

計画書の提出

  • トライアル雇用開始後から2週間以内に、労働条件が確認できる書類とあわせ、実施計画書を提出する必要があります。

※トライアル雇用の途中で継続雇用に移行した場合や自己都合で離職した場合は、支給申請期間が変ります。

障害者短時間トライアルコース

障害者短時間トライアルコースは、基本的な内容は障害者トライアルコースと同じですが、最初は所定労働時間週10時間以上20時間未満から始めて、トライアル期間中に週20時間まで増やし、最終的には継続雇用につなげることを目指すものです。

対象となる障害のある方

  • 障害者短時間トライアル雇用によって継続雇用する労働者の雇入れを希望している方
  • 精神障害者または発達障害者であること

※雇用対象者の選考は、書類ではなく面接で行う必要があります。

おもな雇入れの条件

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 3~12ヵ月の短期間トライアル雇用を行うこと

受給額

  • 月額最大40,000円、最長12ヵ月

継続雇用に対する助成金

障害のある方を継続雇用する場合に受給できる助成金について、主要なものを3つご紹介します。

特定求職者雇用開発助成金

高年齢者や障害のある方といった就職困難者を継続して雇用する企業が受給できる助成金です。障害者雇用関連の助成金の中で、最も一般的なものです。助成の対象によってコースが分かれており、身体障害者、知的障害者、精神障害者に対しては「特定就職困難者コース」と「障害者初回雇用コース」の2つのコースがあり、障害者手帳を持たない難治性疾患患者や発達障害者に対しては「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」があります。

■特定就職困難者コース

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用することが確実だと認められること(65歳以上に達するまでの継続雇用であり、雇用期間が2年間以上であること)

※雇用継続が認められる場合の雇用形態は、基本的には「無期雇用契約」「有期雇用契約(自動更新)」ですが、有期雇用契約(自動更新以外)でも申請可能の場合がありますので、管轄のハローワークや都道府県労働局に確認することをおすすめします。

対象労働者の年齢や障害の程度、1週間あたりの労働時間により以下のように分類されています。

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外の者 高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 60万円 1年 30万円×2期
重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円 2年 30万円×4期
重度障害者等(※2) 240万円 3年 40万円×6期
短時間労働者(※1) 高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 40万円 1年 20万円×2期
高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 80万円 2年 20万円×4期

上記は中業企業事業主が受給を受ける場合です。中小企業に分類されない大企業は、額や期間が異なります。
支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限となります。

※1 短時間労働者とは、1週間あたりの労働時間が20時間以上30時間未満である者。

※2 重度障害者等とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者および精神障害者。年齢は入社時の年齢。

雇用時の状態や離職理由などにより、支給対象外となるケースがあります。いくつかのケースがありますので、詳細は管轄のハローワークや都道府県労働局に確認しましょう。

※支給対象外のケース例
・対象者と事前に内定の約束があった場合
・過去3年以内に対象企業で働いていた場合
・対象者を3か月以上、訓練・実習を行った場合
・雇用する企業の代表者・取締役の、3親等以内の親族・血縁者である場合
※支給対象外の事業主例
・会社都合での退職/期間満了が対象者の入社前後の6か月間の間に発生した場合
(契約社員等で、契約期間満了での終了であっても会社都合となり得ます。本人の希望で終了したいということが証明できる場合以外は、会社都合となります。離職証明書に書かれた離職理由が元になりますが、管轄のハローワークに、自社の会社都合での退職状況を確認することをお勧めします。)

※助成対象期間中に対象労働者を解雇等した場合、以後3年間は不支給。⽀給対象期間の途中で対象労働者が離職した場合は支給されません。

■障害者初回雇用コース

  • 支給申請時点で、雇用中の常用労働数が45.5人~300人の事業所であること
  • 初めて身体障害者、知的障害者または精神障害者を雇い入れ、1人目を雇用してから3ヵ月以内に、法定雇用率を達成すること
  • 1人目の雇用の前日までの過去3年間に、当該人物を雇用していないこと

120万円

■発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用することが確実だと認められること(65歳以上に達するまでの継続雇用であり、雇用期間が2年間以上であること)

※助成対象期間中に対象労働者を解雇等した場合、以後3年間は不支給。⽀給対象期間の途中で対象労働者が離職した場合は支給されない

対象労働者のタイプと企業規模により以下のように分類されています。

対象労働者 企業規模 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外の者 中小企業 120万円 2年 30万円×4期
中小企業以外 50万円 1年 25万円×2期
短時間労働者(※1) 中小企業 80万円 2年 20万円×4期
中小企業以外 30万円 1年 15万円×2期

※1 短時間労働者とは、1週間あたりの労働時間が20時間以上30時間未満である者。

障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)

中小企業の障害者雇用を促進するために設定されている助成金で、初めて障害者雇用を行った中小企業に支給されます。

おもな受給要件

  • 支給申請時点で、雇用中の常用労働数が45.5人~300人の事業所であること
  • 初めて身体障害者、知的障害者または精神障害者を雇い入れ、1人目を雇用してから3ヵ月以内に、法定雇用率を達成すること
  • 1人目の雇用の前日までの過去3年間に、当該人物を雇用していないこと

受給額

120万円

障害者雇用安定助成金 (障害者職場定着支援コース)

障害に応じた雇用管理や雇用形態の見直し、柔軟な働き方の工夫などを行っている事業者に支払われる助成金です。

おもな受給要件

以下の7つの措置をそれぞれ対象となる障害のある方に向けて講じた場合に受給となります。

措置 対象となる障害のある方 支給額と(支給期間)
労働時間の調整や通院または入院のための特別な有給休暇を継続的に与えるなどの「柔軟な時間管理・休暇取得」 以下のいずれか
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 難治性疾患のある方
  • 高次脳機能障害のある方
80,000円(1年)
1週間の所定労働時間を延長する「短時間労働者の勤務時間延長」 20万~54万円(1年)
※障害の種類や重さ、時間変更の内容による。
有期契約労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に、無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する「正規・無期転換」 45万~120万円(1年)
※障害の種類や重さ、時間変更の内容による。
業務に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置する「職場支援員の配置」 短時間労働者は月20,000円、それ以外は月40,000円(2年)
職場復帰のために必要な職場適応の措置を行い、中途障害者を職場復帰させる「職場復帰支援」 以下のいずれか
  • 身体障害者
  • 精神障害者
  • 難治性疾患のある方
  • 高次脳機能障害のある方
月60,000円(1年)
中高年障害者に対し、雇用継続のために必要な措置を行い、雇用を継続する「中高年障害者の雇用継続支援」 以下のいずれか
  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 難治性疾患のある方
  • 高次脳機能障害のある方
70万円(1年)
障害のある方の支援に関する知識を習得させるための講習を雇用する労働者に受講させる「社内理解の促進」
  • 事業所に雇用される労働者
30,000~12万円(1年)
※社内理解のために要した経費による。

※支給額は中業企業事業主が受給を受ける場合です。中小企業に分類されない大企業は額や期間が異なります。

認定を受けるためには、雇用した障害者が入社した後に、都道府県の労働局に「職場定着⽀援計画」に提出する必要があります。この職場定着⽀援計画は雇用する障害者の職場定着に向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(計画の対象となる障害者、期間、事業主が行う措置、計画全体の流れ)を記載します。

認定を受けた上で、対象となる障害者に上記7つに該当する措置を実施し、6か月以上職場に定着させた場合に支給されます。 この制度によって「正規雇用労働者」や「無期雇用労働者」に転換した場合、1名あたり、45万円〜120万円(中小企業以外の事業主は33万円〜90万円)、分割⽀給されます。

継続して雇用する障害のある方への配慮に対する助成金

雇入れに対する助成金のほか、継続して雇用する障害のある方のために配慮を行う事業主が受給できる助成金もあります。

障害者介助等助成金

障害者介助等助成金は、障害のある方の雇用管理のため、介助者の配置などの措置を行う場合に受給できる助成金です。適切な雇用管理のために必要な措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。
障害者介助等助成金には以下の4種類があります。

  • 職場介助者の配置または委嘱助成金:職場介助者を配置または委嘱することを助成
  • 職場介助者の配置または委嘱の継続措置に係る助成金:職場介助者の配置または委嘱を継続することを助成
  • 手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金:手話通訳、要約筆記等の担当者を委嘱することを助成
  • 障害者相談窓口担当者の配置助成金:合理的配慮に係る相談等に応じる者の増配置または委嘱することを助成

おもな受給要件

助成金を受給する事業主は、以下の4つの要件をすべて満たしていなければなりません。

  • 各助成金に定められた「対象障害者」を新規に雇入れ、または継続して雇用する事業主であること
  • 各助成金に定められた「対象となる措置」を実施しなければ、「対象障害者」の雇入れ、または雇用の継続が困難であると認められる
  • 不正受給による障害者雇用納付金制度助成金の不支給措置がとられていないこと
  • 不正受給を行ったことにより返還金が生じている場合、当該返還の履行が終了していること

受給額

支給額・対象期間は各種類によって異なります。

重度障害者等通勤対策助成金

重度障害者等通勤対策助成金は、雇入れまたは継続して雇用する障害のある方の障害特性に応じて、通勤を容易にする措置をとる際に受給できる助成金です。通勤を容易にするために措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。
重度障害者等通勤対策助成金には以下の8種類があります。

  • 重度障害者等要住宅の賃貸助成金:障害のある方を入居させるための住宅を賃借することを助成
  • 指導員の配置助成金:障害のある方5人以上が入居する住宅に指導員を配置することを助成
  • 住宅手当の支払助成金:障害のある方に住宅手当を支払うことを助成
  • 通勤用バスの購入助成金:障害のある方5人以上の通勤のためのバスを購入することを助成
  • 通勤用バス運転従事者の委嘱助成金:障害のある方5人以上の通勤のためのバスの運転手を委嘱することを助成
  • 通勤援助者の委嘱助成金:通勤援助者を委嘱することを助成
  • 駐車場の賃借助成金:自動車通勤を行う障害のある方のための駐車場を賃借することを助成
  • 通勤用自動車の購入助成金:自動車通勤を行う障害のある方のための自動車を購入することを助成

おもな受給要件

上記の8つの助成金を受給する事業主は、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。

  • 助成金ごとに定められた「対象となる措置」を実施しなければ、「対象障害者」の雇入れまたは雇用の継続が困難であると認められること
  • 不正受給による障害者雇用納付金制度関係助成金の不支給措置がとられていないこと
  • 不正受給を行ったことにより返還金が生じている場合、当該返還の履行が終了していること

受給額

支給額・対象期間は各種類によって異なります。

まとめ:自社で活用できそうな助成金を確認し、申請する

今回は、障害者雇用に関する助成金の種類やそれぞれの特徴についてご紹介しました。受給条件はそれぞれありますが、ここで紹介したもの以外にも「労働保険料を滞納している事業主」や「暴力団関係の事業主」は、助成金の受給はできないなど、障害を持つ方の雇用に関する助成金には共通のルールもあります。
また、助成金の受付窓口は、ハローワークの助成金事務センターなどが多くなっています。助成の対象や申請に必要な書類、提出期限もそれぞれ異なりますので、該当しそうな助成金がありましたら、一度、受付窓口に問い合わせしてみることをおすすめします。