障害者雇用の法律・制度を解説!押さえるべきルールとは?

一定数以上の従業員を雇用する事業主は、法定雇用率以上、障害のある方の雇用をしなければならないといった、企業の障害者雇用に関するルールがあります。どのルールも、基本的には企業規模に関係なく適用されるものであり、「知らなかった」で済まされるものではありません。
ここでは、企業が押さえておくべき障害者雇用の法律・制度を、まとめてご紹介します。

障害者基本法

障害者基本法は、障害のある方に関する国の施策の基本理念を定めたものです。1993年に障害のある方の自立と社会参加の促進を図るため、1970年成立の心身障害者対策基本法を改正する形で作られ、2004年の改正で、障害を理由とした差別や権利侵害の禁止が明記されました。
さらに、2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)に日本が署名したことを受けて、2011年にも改正が加えられ、障害の有無にかかわらず、誰もが「かけがえのない個人」として尊重されるべきこと、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現を目標とすることなども追加されました。

障害者基本法は、地域社会における共生・差別禁止、国際的協調や医療、介護、教育、雇用の促進、障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策などを定めています。その中で第1章総則と第18条では「職業相談」について、国と都道府県、市町村は、障害のある方が、多様な就業の機会を確保するよう努めるとともに、障害のある方一人ひとりの特性に配慮した職業相談、職業訓練などの施策をしなければならないとしており、 同19条では「雇用の促進」について定め、国や都道府県、市町村は、事業者における雇用を促進するため、障害のある方の優先雇用や、そのための法律や制度を作らなければならないとしています。
さらに、企業に対しては、障害のある方に適切な雇用の機会を確保するとともに、障害のある方一人ひとりが仕事をし、そして続けられるように必要な支援を行わなければならないとしています。

障害者差別解消法

障害者差別解消法は、障害者基本法第4条に定める「障害を理由とした差別や権利・利益侵害の禁止」の規定を具体化するために、2013年に制定、2016年4月から施行された法律です。
国や都道府県、市町村、事業者などが障害のある方に正当な理由なく障害を理由として差別することを禁止し、民間事業者に対しては、雇用以外のすべての場面において(※1)、障害のある方に対する合理的配慮を行う努力義務(※2)を定めています。

※1 雇用に関しては、次に紹介する「障害者雇用促進法」の規定が適用されます。
※2 事業の分野、業種、場面、状況によって求められる配慮の内容・程度がさまざまであることから、努力義務(対応に努めること)とされている。

障害者雇用促進法

障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。事業主が障害のある方を雇用する義務、雇用促進などに対する措置、障害のある方本人に対する措置として、リハビリテーションの実施などについて定めています。事業主に対しては、具体的には次のような措置が定められています。

障害者の雇用義務

すべての事業主に、障害者雇用率に相当する人数の、障害のある方の雇用が義務付けられています。 障害者雇用率は、企業の障害者雇用が初めて法的義務化され、これまで何度か段階的にその数値が引き上げられてきました。2018年には、民間企業では2.0%から2.2%に、国や地方公共団体等では2.3%から2.5%に、都道府県等の教育委員会では2.2%から2.4%になりました。さらに、2021年3月までに、さらに0.1%ずつ引き上げられることが決まっています。
また、2018年4月より法定雇用率の算定基準が見直され、今まで除外されていた精神障害者が新たに算定基準として加えられました。

■障害者雇用率の求め方

障害者雇用率=対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数/常用労働者数+失業者数

※対象障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者。
※短時間労働者(所定労働時間数が週20時間以上30時間未満)は、原則1人を0.5人としてカウント。
※重度の身体障害者と知的障害者は、1人を2人としてカウント。

納付金制度

障害者雇用に伴う、事業主の経済的負担の調整を図るための制度です。
前述の障害者雇用率未達成の事業主は、不足1人につき月額50,000円の納付金を納める必要があります(適用対象は常用労働者100人超の事業主。ただし、常用労働者100人超200人以下の場合は月額40,000円)。逆に、雇用率を超えて雇用している場合は、超過1人につき月額27,000円が支給されます(適用対象は常用労働者100人超の事業主。100人以下の事業主は、別途報奨金制度として、障害のある方を4%または6人のいずれか多い人数を超えて雇用していた場合、超過1人につき月額21,000円支給)。

障害のある方に対する差別の禁止および合理的配慮の提供義務

2013年の障害者雇用促進法改正により、障害のある方に対する差別の禁止が盛り込まれ、事業者には、過重な負担とならない範囲で、障害のある方が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置を講ずる義務(合理的配慮を行う義務)が課せられることが明記され、2016年より施行されています。
採用や賃金、人事評価などにおいても、障害者であることを理由にせず適切に評価することを求められ、労働能力などを適性に評価した結果であることを具体的に説明できるようにしておく必要があります。
合理的配慮は、「荷重な負担」とならない範囲で配慮を提供し、実現が難しい場合には代替案を提示するなど、対応を協議することが求められます。
また、この差別の禁止や合理的配慮の提供に関して、相談窓口の設置など、障害者からの相談に適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないことや、雇用している障害のある方から苦情が出た場合に、その苦情に対して自主的に解決する努力義務を定めています。

障害者総合支援法

障害者総合支援法は、障害のある方の日常生活および社会生活を総合的に支援することを目的とする法律です。以下に、障害者総合支援法に基づく3つの事業についてご紹介します。

就労継続支援A型事業

就労継続支援事業とは、障害や病気のために一般企業で働くのが難しい方に対し、事業所が働く場を提供するとともに、その知識や能力の向上のために必要な訓練を行うことをいいます。
就労継続支援事業のうち、雇用契約を結んだ方を対象としたものは「就労継続支援A型事業」に分類されます。障害を持った方が、企業や個人から事業所に依頼された仕事を行い、給与を受け取ります。なお、利用期間の制限はありません。
仕事の内容は、各事業所が受けた依頼により、飲食店のホールスタッフからデータ入力代行、自動車部品の加工まで、多岐にわたります。なお、企業や個人が仕事を依頼するメリットとしては、業務を外注することによるコスト削減や人件費の削減などが挙げられます。

<就労継続支援A型事業で仕事が行える対象者>

  • 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害や難病がある、65歳未満(※)の方
  • 過去に就労したことはあるが現在は働いていない方
  • 特別支援学校で就職活動を経るか、就労移行支援サービスを利用またはしたが就労に結び付かなかった方

※65歳に達する前の5年間、障害福祉サービスの支給決定を受けていた方で、65歳に達する前日までに就労継続支援A型の 支給決定を受けていた方は、引き続き利用することが可能です。

就労継続支援B型事業

就労継続支援B型事業は、A型事業と同じく、障害や病気のために一般企業で働くことが難しい方に、働く場を提供するとともに、その知識や能力の向上のために必要な訓練を行います。能力が身に付けば、A型事業に移行できることもあります。なお、就労継続支援B型事業も、利用期間の制限はありません。
B型事業を行う事業所と利用者は雇用契約を結ばないので、利用者が受け取るのは賃金ではなく「工賃」となり、最低賃金の規定は適用されません。

<B型事業で仕事が行える対象者>

  • 就労経験はあるが年齢や体力の面から一般企業での就業が難しくなった方
  • 就労移行支援サービスを利用した結果、B型事業の利用が適切とされた方
  • 上記2つにあてはまらない方で50歳に達している方、または障害基礎年金1級を受給している方

就労移行支援事業

就労を目指す65歳未満(※)の障害のある方を対象に、支援事業所内の作業や提携先企業での作業・実習を通して、就労に必要な技術・知識の習得を促すとともに、求職活動の支援、個々の適性に応じた職場の開拓、就労後の職場定着の支援などを行う事業です。利用期間は最大2年間で、最終的には一般企業への就職を目標としています。
企業が実習生の受け入れを希望する場合は、就労移行支援事業所に連絡して、実習企業リストに加えてもらいます。企業側にとって実習生の受け入れは、「社内ルールを見直し、業務を改善するきっかけになる」「働き方を見直すきっかけになる」といったメリットがあります。

※65歳に達する前の5年間、障害福祉サービスの支給決定を受けていた方で、65歳に達する前日までに就労継続支援の支給決定を受けていた方は、引き続き利用することが可能です。

まとめ:障害者雇用ルールのチェックを

以上のことをまとめると、民間事業主に直接関わる障害者雇用に関するルールは次の5つとなります。

民間事業主が関わる障害者雇用に関するルール

  • あらゆる場面においても障害を理由とする差別の禁止
  • 法定の障害者雇用率に則った障害者雇用義務
  • (所定の障害者雇用率を満たせなかった場合)納付金の納入義務
  • 採用段階など、雇用関係を結ぶ前段階における、障害のある人に対する合理的配慮(努力義務)
  • 雇用期間を通じて、障害のある労働者に対する合理的配慮(法定義務)

障害者雇用に関するルールには、民間企業の事業主であれば、企業規模に関係なく義務を負うものも含まれます。
障害者雇用を進める前に、念のため一度確認してみてください。