法定雇用率の雇用義務を軽減する措置として設けらている除外率制度について解説します。
2027年度の法定雇用率2.7%引き上げに向け、段階的に2024年度に2.5%、除外率適用業種では2025年度に除外率10%削減への対応が必須となっており、よりストレッチの利いた雇用対策が求められます。現在の障害者雇用市場とのギャップを踏まえ、今後の必要な対応方針にも触れています。

目次

障害者雇用の除外率とは

除外率とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、障害者の雇用義務を軽減する措置として設けられた制度です。
障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定のため、法定雇用率を設定しています。しかし、一律の雇用率を適用することになじまない性質の職種の労働者が相当の割合を占める業種については、雇用する労働者数を計算する際に、労働者数を控除できる制度を設けています。具体的には、建設業・医療業・道路貨物運送業をはじめとした以下のような業種にて除外率が適用されています。

除外率のこれまでの推移と今後

除外率制度については、ノーマライゼーションの観点から2002年の法改正にて、2004年4月から廃止となりました。但し、特例措置として当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされました。
廃止を踏まえ、2004年4月と2010年7月にそれぞれ一律に10ポイントの引き下げが実施されました。しかしその後、10年以上引き下げられていないことから、労働政策審議会 (障害者雇用分科会)での議論を経て2025年4月に一律に10ポイント引き下げが決定しています。今後も廃止に向けた定期的な引き下げが想定されます。

除外率の計算方法と、今後の法定雇用率アップ・除外率引き下げに伴う必要雇用数

例:除外率30%の業種 常用労働者数 1000人の企業の場合
・除外率なし 1000人 × 2.3% = 23人(雇用義務数)
・除外率あり (1000人 - 300人) × 2.3% = 16人(雇用義務数)

2023年5月現在 2024年4月予定 2025年4月予定 2026年7月予定
労働政策の
ポイント
雇用率0.2% UP 除外率10ポイント引下 雇用率0.2% UP
法定
雇用率
2.3% 2.5% 2.5% 2.7%
適用される除外率 30% 30% 20% 20%
雇用義務のある障害者数
除外率
なし企業
23名 25名 25名 27名
除外率
あり企業
16名 17名 20名 21名

適用されている除外率・常用労働者数次第では、除外率10%削減時のほうが、法定雇用率引き上げ時以上に必要雇用数へ大きな影響を及ぼすことが想定されます。実際に自社の雇用義務数がどのような推移をたどるか簡単に試算いただける「実雇用率計算フォーマット」を下記より無料でダウンロードいただけますので、是非ご活用ください。

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除外率設定業種の共通点と現状

身体障害者の雇用が中心

厚生労働省が発表した「令和4年(2022年)の障害者雇用状況の集計結果」において、民間企業における各障害区分別の内訳は、身体障害者(58.3%)、知的障害者(23.8%)、精神障害者(17.9%)となっています。一方で、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が2021年3月に実施した 「除外率制度の対象業種における障害者雇用に関する実態調査」‎によると、除外率適用業種に従事する障害者は一部の職種を除き身体障害者が8割以上を占め、知的障害者・精神障害者の割合は低いといった調査結果が出ています。

特例子会社の数が少ない

弊社調べによると(注1)、民間企業の全業種における除外率対象の業種が全業種に占める割合(企業数・常用労働者総数ともに)は約20%程度と推測されます。また、それら除外率対象の企業の内、特例子会社を有する企業の割合は約11%程度と推測され(注2)、特例子会社を有する企業の割合は決して高い水準とはいえない状況です。

障害者雇用市場の状況・必要な対応方針について

厚生労働省が発表した「令和4年(2022年)の障害者雇用状況の集計結果」においても、障害種別ごとの雇用数では、知的障害者と精神障害者は前年よりも増加したものの、身体障害については微減(対前年比0.4%減)に転じており、身体障害者のみで雇用率を満たすことは、非常に難易度が高い状況と言えます。除外率設定業種の法人企業の場合、これまで進めてきたような身体障害者中心の雇用から、雇用が進んでいない障害区分(精神障害・知的障害)への雇用拡大も必要不可欠となります。また、これまでの「配慮が少なく一般部署にて採用が出来た人材層」から、特例子会社などの集合配置を職域とした「雇用吸収力が見込める層」への拡大も視野に入れなければ、今後の雇用率アップ・除外率廃止といった状況に対応できなくなる可能性が高いといえます。

障害者雇用の現市場環境については、以下の記事をご参照ください。

・身体障害者と精神障害者の年齢構成比較
・企業の雇用モデル分布 大企業と中小企業の違い

提言:引き上げとなる法定雇用率・10%削減となる除外率に対する対策

量の確保:集合配置型(事務センター・特例子会社)の雇用検討

「雇用吸収力が見込める層への拡大」を進めるにあたり、集合配置型の雇用を検討するのは有効な手段です。各事業部・グループ会社より、定型業務を切り出し、事務センター・特例子会社の設立を進めることを考えても良いかもしれません。本施策を進める場合、時間・工数ともにかかりますが、2~3年先を見越した場合、有効な打ち手となり得るでしょう。

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質の確保:採用する人材層の拡大を図りつつ、戦力性を担保する雇用検討

質の向上を図る上で重要なことは、多様な障害者人材を受け入れることに他なりません。例えば、弊社が着目している人材の一つに、障害特性を強みに主にデータ活用領域で活躍できる可能性が高い発達障害者が挙げられます。法的義務としての障害者雇用推進に留まらず、企業成長のための人材確保の切り口から、「戦力」として活躍が期待できるニューロダイバース人材の採用を検討するのも一手です。雇用数の確保に繋がる手法ではないですが、企業における多様な障害者人材受け入れの第一歩として検討されてみてはいかがでしょうか。