障害者雇用を推進する企業に対する助成金制度は種類が多く条件も様々あるため、どのようなときにどの助成金を申請できるのか分からないという企業担当者も多いのではないでしょうか。今回は、助成金の中でも企業からよく利用されている「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」について紹介します。

目次

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、高年齢者や障害者などの就職困難者を雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用する企業が受給できる助成金です。障害者に限定した助成金ではありませんが、障害者雇用関連の助成金の中で最もよく利用されています。障害者雇用における特定就職困難者コースの対象者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者です。助成金受給額は、短時間を除く「重度障害者等を除く身体・知的障害者」と「重度障害者等」、短時間の「身体・知的・精神障害者」で異なります。また、大企業か中小企業かによっても支給額と助成期間に違いがあります。

企業から利用される理由

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)が利用される理由には、「助成金額が大きい」「企業側の申請難易度が低く、申請しやすい」などが挙げられます。申請に必要な情報を確認することができれば、人事担当者が申請・手続きを進めることも十分可能です。

他の助成金では求人を出す時点で申請の有無を明記しなければならないため事前準備が必要ですが、特定就職困難者コースの場合、採用後や入社後でも手続きできます。忙しい雇用担当者でも検討しやすい点が、利用しやすさにつながっていると言えるでしょう。

支給要件と、除外される要件

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の主な支給要件は、「対象となる障害者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること」「雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用することが確実だと認められること(65歳以上に達するまでの継続雇用であり、雇用期間が2年間以上であること)」です。主な対象労働者は「身体・知的障害者」、「重度障害者や、45歳以上の障害者や精神障害者」で、雇い入れ日現在の満年齢が65歳未満の者になります。

除外される要件の例として「対象者と事前に内定の約束があった場合」「過去3年以内に対象企業で雇用・請負・委任等の関係があった場合」「過去3年以内に対象者に対し、3カ月以上の訓練・実習を行った場合」「雇用する企業の代表者・取締役の、3親等以内の親族である場合」「対象労働者の雇入れ日の前後6か月間に、企業の都合による従業員の解雇(勧奨退職を含む)をしていた場合」が挙げられます。他にも支給要件や、支給対象外となるケースがいくつかあるため、詳細は管轄のハローワークや都道府県労働局に確認しましょう。

申請から受給されるまでの流れ

申請から受給までの流れをご紹介します。

  • (1)入社日~入社後1カ月:企業の雇用担当者

・労働局やハローワークへ、支給申請のための必要書類を提出します。

  • (2)入社後4~6カ月:企業の雇用担当者⇔労働局

・ハローワークと労働局による審査を経て、申請可の場合、企業(雇用事業所)宛に申請書類が届きます。

・申請書類を揃えて、期限までに申請窓口のハローワークないし労働局に提出します。

※申請不可の場合、労働局から雇入企業への連絡はありません。

※申請時には「職業紹介証明書」が必要になります。当社からの紹介で入社された方に対する助成を申請する場合は、当社から職業紹介証明書をお送りしています。

  • (3)入社後7~8カ月:企業の雇用担当者⇔労働局

・労働局より助成金が支給されるかどうかの連絡が入ります。
・審査が合格の場合、助成金が企業に支給されます。
※助成対象期間は、支給対象期に応じて6カ月ごとに申請が必要です。

申請不可の場合、労働局から雇入企業への連絡はありません。入社後6カ月経っても申請書類が届かない場合、管轄の労働局に申請可否を直接確認することをおすすめします。

申請における注意点

「特定就職困難者コース」を申請する際に、押さえておきたい注意点を3つ紹介します。

法定雇用率を満たしていなくても申請できる

助成金の支給要件に法定雇用率の達成有無は含まれていないため、法定雇用率を満たしていなくても助成金は申請可能です。助成金の受給要件を満たしていれば支給されます。

なお、助成金と法定雇用率とでは重度障害の捉え方が異なるため、注意が必要です。法定雇用率では身体障害者手帳の1級・2級や、療育手帳A判定の方などが重度障害となり、「精神障害者」は該当しません。一方、特定就職困難者コースでは、精神障害者も手帳の等級を問わず重度障害と同等の受給額になります。

精神障害者は等級を問わず、重度障害に含まれる

特定就職困難者コースでは、身体障害者と知的障害者の場合、短時間労働以外(1週間の所定労働時間が30時間超)で等級の違いによりで支給額が異なります。一方、精神障害者は等級を問わず一律で重度障害に含まれるため、精神障害者を雇用した場合、軽度の身体障害者を雇用するよりも助成金が高くなる場合があるでしょう。

支給期ごとに申請が必要

審査に通ると企業側に申請書類が届き手続きを行いますが、初回手続きだけで完了ではなく、支給期ごとの申請が必要です。例として、中小企業ではたらく「短時間を除く重度障害者等」を対象とする場合、助成金の総額240万円が支払われる「助成対象期間」は3年。その間に、第1期~第6期まで計6回の「支給対象期」があります。そのため、40万円×6期分の6回申請が必要です。助成金が全額支給されるよう、支給期ごとに、確実に申請を行いましょう。

企業からよく寄せられる質問

制度を利用するにあたり、企業側からよく寄せられる質問を4点ピックアップして紹介します。

Q-1 )知人からの紹介や自社で直接採用した方は対象になりますか?
└ A )支給対象外となります。
ハローワークや地方運輸局、特定地方公共団体や職業紹介事業者(有料、無料)から紹介された労働者を雇用保険の一般被保険者として採用した場合を支給対象としています。それ以外のルートで採用された労働者は支給対象外となります。
Q-2 )有期雇用契約で採用した方は対象になりますか?
└ A )継続雇用が確実であれば支給の対象となります。
対象となる労働者本人の希望または自動更新によって雇用契約を更新でき、65歳以上に達するまで継続雇用し、かつ、2年以上の継続雇用が確実であれば対象となります。一方、勤怠状況や成果等をもとに事業主が継続雇用有無を判断する場合は、対象外となります。
ただし、自動更新以外でも申請可能な場合があります。各労働局やその他状況によって判断が異なるため、管轄のハローワークや都道府県労働局に確認することをおすすめします。
Q-3 )就業条件が短時間勤務からフルタイムになる予定がある場合、どちらの就業条件で申請すればいい?
└ A )提出時点の就業条件で申請します。
入社時は短時間勤務ですが、何カ月後にフルタイムになると決まっている場合はフルタイムで申請できます。あくまでも予定で決定事項ではない場合は短時間勤務で申請しましょう。もし申請書類一式が届いた時点で勤務時間の変化があった場合は、ハローワークにその旨を相談してください。
Q-4 )対象労働者を解雇するとどうなりますか?
└ A )助成金が受けられなくなります。
支給対象となった労働者に対し、事業主都合による解雇や退職勧奨による任意退職が発生した場合、その後3年間は特定求職者雇用開発助成金が受けられなくなります。対象となる労働者を解雇していないかについて、一般助成金支給要件照会や事業所別被保険者台帳照会によって確認されます。
なお、支給対象期間の途中で離職した場合は、支給対象期分(6か月分)の助成金は原則、支給されません。

まとめ

高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する企業を対象とした、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」。「助成金額が大きい」「申請に必要な情報を確認することができれば、人事担当者が申請・手続きを進められる」などの理由から、障害者雇用を推進する企業向けの助成金の中でも多く利用されています。
利用する際は、「申請不可の場合の連絡がない」「支給期ごとに申請が必要」といった点に注意しましょう。