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【最新2023年度】 雇用率アップで何パーセントに?徹底推計!

法定雇用率の見直しについて

障害者雇用促進法の第43条2項によれば、少なくとも5年ごとに法定雇用率を見直すことになっています。前回の引き上げが2018年4月であったことから、次回の見直しは2023年4月となる予定です。2021年3月にも2.2%から2.3%へ引き上げられましたが、これは2018年の段階で2021年4月までに2.3%への引き上げられることが確定しており、激変緩和措置として段階的に引き上げたという背景があります。

法定雇用率の算出計算式について

■民間企業における雇用率設定基準 ■特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率

法定雇用率は障害者雇用促進法第四十三条第二項に規定され、算出式は上記のとおりとなっています。2018年の法定雇用率改定時より精神障害者が算定基礎に含まれるようになり、分子に精神障害者を加えて初めて試算された法定雇用率は約2.42%でした。ただ、先述のとおり、施行後5年間は障害者の雇用状況・その他事情を勘案して法定雇用率が定められています。
また、「常用労働者」とは、週所定労働時間が20時間以上で、かつ1年以上雇用されている(見込みも含む)労働者のことです。正社員に限定されず、パートやアルバイトなどの雇用形態も含みます。

2023年度の障害者雇用率はどうなる?

計算式分子の「失業障害者数」は政府の統計データとして公開されていないことから、試算値をもとに当社が算出した概算となりますが、理論上の法定雇用率は2.8%となりました。ただ、前回(2018年)の引き上げ時に、理論上の数値より下げた経緯を踏まえると、2023年度の引き上げについては、2.5~2.6%になるではないか?と推測しています。もし仮に2.5%となった場合、障害者雇用の義務化対象も従業員40.0人以上の企業へと広がります。

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2023年度以降の障害者雇用はどうなる?労働政策審議会 障害者雇用分科会で提出された意見を一部ご紹介

障害者雇用分科会は、雇用率や雇用制度、雇用の継続、就労など障害者雇用にまつわる様々なことを議論・審議し、雇用施策の充実強化を国に対して提言していくことを目的に行われている会議です。2019年2月13日以来となる今回は、今後の障害者雇用施策の充実強化に関する意見書として、2022年6月17日に厚生労働大臣に提出されました。

週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害者の扱いに関して

障害者の多様な就労ニーズを踏まえたはたらき方の推進を目的に、週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の就労機会を拡大する方針が明記されています。これらの障害者を事業主が雇用した場合に、特例的な扱いとして、実雇用率の算定対象に加えることが検討されており、1人をもって 0.5カウントとされる見込みとなっています。
※これまで週所定労働時間20時間未満の障害者を1年以上雇用する場合には「短時間雇用の特例給付金」を申請することが可能でしたが、当該措置により、就業機会の拡大を直接的に図ることが可能となり、特例給付金は廃止される方向です。

適用開始時期、時限性の有無、新規雇い入れ時のみといった適用条件などの詳細はまだ明らかになっていませんが、障害者雇用率制度上の変更としては大きなものではないため、2023年4月1日からの適用開始となるのではないかと当社では推測しています。また、このような特定短時間労働に関しては、障害者雇用に限った話ではなく、人材不足解消が期待できる取組として注目を集めています。一部の先進的な企業では、CSR・SDGsの観点から、地域や大学などと共同でテレワークを活用したショートタイムの実証実験を行い、労働力不足解消の確かな手ごたえを得ているようです。新型コロナウイルス感染拡大により、ICT(情報通信技術)を活用したテレワークも普及してきた昨今、「ショートタイム」×「テレワーク」が障害者雇用文脈でも雇用拡大の肝になるかもしれません。

精神障害者の算定特例の延長

2018年の障害者雇用促進法改正時、精神障害者である短時間(20時間以上30時間未満)労働者を1カウントとする特例措置が設けられましたが、当時は2023年度末までとされていました。ただ、依然として精神障害者の職場定着率は週 20 時間以上 30 時間未満勤務の場合が相対的に高くなっており、職場定着を進める観点から、当面の間、この特例措置を継続することが適当である、としています。

就職時 3カ月後 1年
20時間未満 100% 67.0% 53.2%
20 - 30時間
未満
100% 82.5% 60.4%
30 - 40時間
未満
100% 72.2% 50.8%
40時間以上 100% 63.8% 42.4%

(厚生労働省 第74回労働政策審議会障害者雇用分科会「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令について 資料1-2」を基に当社作成)

先述のとおり、2023年度末迄となっている特例措置ですが、延長がなされるようです。多くの業種にて精神障害者の雇用が進む一方、「未だ精神障害者の雇用に着手が出来ていない」・「以前は、精神障害者を雇用したものの、うまく行かず敬遠している」ケースも一部の企業には見受けられます。しかしながら、雇用率引き上げや検討されている雇用施策、労働市場での伸び率などをみても、精神障害者の雇用を避け続けることは難しいのではないでしょうか。また、就労を希望する精神障害者は就職活動において、受け入れ企業側に精神障害者の雇用実績があるかを重要視する傾向にあり、課題を先送りにすればするほど、安定就業を期待できる精神障害者の採用難易度は上がると推測されます。

除外率の引下げによる障害者雇用の促進

除外率は2002年の法改正にて2004年4月から廃止となっており、現在は経過措置として船舶運航等の事業や道路旅客運送業や建設業など、一部の業種にのみ認められている状況です。2010年7月の引き下げから、既に10 年以上引下げが行われておらず、その間、除外率設定業種の実雇用率も着々と上がってきており、早期の廃止実現に向けてピッチを上げる必要が議論されています。これらを踏まえ、除外率を一律に 10 ポイント引き下げることが適当である、とされています。

一律10ポイントの引き下げをいつから適用するかは名言していないものの、意見書では「早期撤廃」と記載されており、当社の予測では2023年4月以降2~3年以内を目途に一律10ポイント削減となるのではないかと推測しています。除外率が適用されている業種では、2023年度の雇用率アップへの対策およびその後も続く除外率10%削減への打ち手と、段階的な対策を講じる必要性があります。そして、10ポイント引き下げられた後も除外率の早期撤廃の動きが加速した場合、除外率が適用されている大企業では、現在メインとなっている職域ではそもそも雇用拡大が難しく、特例子会社など集合配置型の雇用スキームへの抜本的な改善が求められるかもしれません。

まとめ

既に雇用率アップを見据えて対策を進められている法人企業もいれば、本記事をご覧になって危機感を感じられたご担当者様もいるのではないでしょうか。特にこれまで除外率適用となっていた業種の企業にとっては非常に大きな影響があるかと思います。各社ハローワークへ障害者雇用状況報告書(2022年度分)を作成・提出されていることと思いますので、現状を把握された上で、2023年度以降の対策に本記事をお役立てください。また、本編では触れていませんが、障害者雇用分科会では福祉施策の更なる連携強化や定着・活躍など障害者雇用そのものの質の向上にも言及しております。今後は、雇用率の達成以上に「雇用の質向上」への取り組みも必要です。