多くの障害者を雇用したり、就業に積極的に取り組む企業は、税制優遇制度を利用することができます。障害のある社員の給与面や、助成金を受けて障害者雇用のための施設の設置や改良を行う場合などに対して、税制上の優遇措置が受けられる、というものです。
今回は、障害者を雇用した場合にどのような優遇措置を受けられるかを知りたいという雇用担当者に向けて、利用できる優遇制度の内容や、対象となる税金をまとめて紹介します。

※この記事に記載されている情報は、2019年6月時点のものです。

目次

障害者雇用による5つの税制優遇制度

障害者の雇用や就業に積極的な企業が利用できる税制上の優遇措置は次の5つです。

  • 機械等の割増償却措置
  • 助成金の非課税措置
  • 事業所税の軽減措置
  • 不動産取得税の軽減措置
  • 固定資産税の軽減措置

次の章から、それぞれの制度を詳しく見ていきましょう。

機械等の割増償却措置(法人税・所得税)

割増償却とは、減価償却の限度額を上回った金額を減価償却費として計上できる制度です。一定数以上の障害者を雇用する企業は、その年もしくはその5年前以内に取得・製作・建設した設備などについて、普通償却限度額の<建物32%・機械24%>の割増償却をすることができます。

対象となる設備とは

次のうち、減価償却を行う年またはその5年前以内に取得、制作、建設したものが対象になります。

  • 障害者が働く事業所に設置されている機械、およびその付属装置
  • 障害者が働く工場用の建物、およびその付属設備

対象となる事業所は

次のいずれかの要件を満たす事業所が対象となります。

  • 労働者の総数に対し、障害者の割合が50%以上であること
  • 障害者の雇用数が20人以上であり、かつ労働者の総数に対し、障害者の割合が25%以上であること
  • 法定雇用率を達成し、雇用している障害者数が20人以上であり、かつ雇用障害者の中で重度障害者の割合が55%以上であること

適用期間

2020年3月31日まで

助成金の非課税措置(法人税・所得税)

助成金・補助金・給付金などは、会計上同じ「収入」の扱いになります。売上などを足した収益から損益(費用)を引き、課税が行われます。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金や、国・地方公共団体などから支給された補助金・給付金によって、固定資産を取得または改良した場合、その取得や改良に充てられた金額は圧縮記帳により損金算入(法人税)、または総収入額に不算入(所得税)とすることができます。

※圧縮記帳とは、助成金や補助金などを使って固定資産を購入した際、その購入価額から補助金等の額を控除して購入価額とすることです。

対象となる助成金

非課税措置が取られる助成金は、以下の通りです。

  • 障害者作業施設設置等助成金:
    障害者を労働者として継続雇用する事業主に対し、障害者がスムーズに作業を行えるように施設の改造などが行われた場合の費用を、一部助成するもの。
  • 障害者福祉施設設置等助成金:
    障害者を労働者として継続雇用する事業主に対し、障害者の福利厚生充実のために、教養文化施設・給食施設・保健施設などの施設の設置または整備する際の費用を、一部助成するもの。
  • 重度障害者等通勤対策助成金:
    一定の基準以上の障害のある労働者が、容易に通勤できるような措置をとった事業所に対し助成をおこなうもの。
  • 重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金(用語集)
  • 障害者能力開発助成金:
    身体障害者や知的障害者・発達障害者などに向けて、職業能力開発訓練を行う事業主に対して、助成するもの。

適用期間

この制度は恒久措置となっており、期間の制限はありません

事業所税の軽減措置

助成金の支給を得て、障害のある方を一定数以上雇用する事業所は、以下の事業所税の軽減措置を受けることができます。
この措置には、事業所の床面積を対象とした「資産割」と、雇用されている従業員の給与総額を対象とした「従業員割」の2つがあります。どちらも恒久措置となっており、期間の制限はありません。

資産割

障害者を雇用する事業主が、助成⾦の支給を受けて施設の設置を行った場合に、そこで行われる事業に係る事業所税について、課税対象となる事業所の床面積のうち、1/2にあたる面積の控除を受けられます。
障害者を10人以上雇用し、かつ雇用割合が50%以上である事業主が対象となります。
対象となる助成金は「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金(用語集)」(雇用保険二事業に基づく)または「重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金(用語集)」(障害者雇用納付金制度に基づく)のいずれかになります。

従業員割

事業所税の課税計算の基礎となる従業員給与総額の算定および免税点の判定において、障害者は従業員から除くことが認められます。
対象は障害者を雇用する事業主で、雇用人数や雇用割合は特に定められていません。

不動産取得税の軽減措置

障害者を多く雇用している事業所が、支給された助成金によって事業用施設をつくり、かつその後3年以上事業用として施設を使用した場合、その施設の取得に伴う不動産取得税について、取得価格の1/10に相当する額に税率を乗じて得た額が減額されます。

対象となる事業所は

下記の2つの要件両方を満たしている事業所が対象となります。

  • 障害者の雇用人数が20人以上であること
  • 障害者雇用割合が50%以上であること

対象となる助成金

対象となる助成金は「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金(用語集)」(雇用保険二事業に基づく)または「重度障害者等多数雇用事業所施設設置等助成金(用語集)」(障害者雇用納付金制度に基づく)のいずれかになります。

適用期間

2020年3月31日まで

固定資産税の軽減措置

障害者雇用を行う事業所が、助成金の支給を得て事業用施設を取得した場合、取得から5年度分、その施設についての固定資産税の課税標準となる価格から、取得額の1/6に障害者雇用割引を乗せた金額が減額されます。

対象となる助成金

適用期間

2020年3月31日まで

申請方法はハローワークや税務署に確認を

障害者を雇用するにあたって利用できる税制上の優遇措置制度についてご紹介しました。障害者雇用を考えた時に適応される助成金の種類や、税制優遇制度に関わる申請方法について難しいと感じる方も多いと思います。そんな時には、一度ハローワークや最寄りの税務署に問い合わせてみることをおすすめします。
また、適用期間や対象などの要件は都度変わる可能性がありますので、申請時に都度確認するようにしましょう。