障害者雇用納付金制度のポイントと注意点

「障害者雇用納付金制度」は、障害者を雇用するすべての企業に関わる重要なルールの一つで、事業主はその内容を正しく把握しておく必要があります。
しかし、「納付金は罰金のようなもの」「納付金さえ納めれば、障害者の雇用義務を果たしたことになる」など、制度を誤解している人も少なくありません。そこで、障害者雇用納付金制度の概要とその趣旨、具体的内容、注意点について紹介します。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度とは、障害者の雇用促進と安定を図るために設けられた制度です。 この制度の前提として、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」が定める、「障害者雇用率制度(法定雇用率)」の存在があります。民間企業の法定雇用率は2.2%となっており、企業は常時雇用している労働者数のうち、2.2%以上の障害者を雇用することを義務付けられています。

障害者雇用促進法で定められた法定雇用率が未達成の企業から納付金を徴収し、そのお金を主たる財源として、法定雇用率を達成している企業に調整金や報奨金、助成金を支給するしくみになっています。

制度の趣旨は「雇用の促進と安定」のため

障害者雇用納付金制度は、「障害者の雇用は、企業が連帯して果たすべき社会的責任である」という理念に基づいています。

企業が障害者を雇用する際には、設備の整備や改良、相談員の配置、合理的配慮の提供や雇用管理などが必要になり、ある程度の経済的負担が発生します。さらに、企業には法定雇用率以上の障害者を雇用するという義務を果たしている企業と果たしていない企業があり、そのあいだに経済的負担のアンバランスが生じてしまうのです。

この経済的な負担のアンバランスを調整し、障害者雇用の促進と安定のため、事業主が共同で拠出する形で障害者雇用納付金制度が設けられています。

4つの具体的な内容

障害者雇用納付金制度は、以下の4つから成ります。

  • 法定雇用率未達成の事業主から障害者雇用納付金を徴収
  • 法定雇用率以上の障害者を雇用する事業主に対して調整金、報奨金を支給
  • 在宅就業障害者・在宅就業支援団体に業務を依頼した事業主に対して特例調整金、特例報奨金を支給
  • 各種助成金を支給

それぞれの内容について見ていきましょう。

法定雇用率未達成の事業主から障害者雇用納付金を徴収

法定雇用率を満たさない事業主は、不足1人につき50,000円の障害者雇用納付金が徴収されます。ただし、常用労働者が100人超200人以下の事業主は、2015年4月から2020年3月末までは月額40,000円に減額されます。

常用労働者100人超の企業 月額50,000円×不足人数分
常用労働者100人超200人以下の企業 月額40,000円×不足人数分
※2020年3月まで

法定雇用率以上の障害者を雇用する事業主に対して調整金、報奨金を支給

法定雇用率を達成している事業主は、一定の調整金、もしくは報奨金が支給されます。支給額は以下の通り、常用労働者の人数によって異なります。

常用労働者100人超の企業 月額27,000円×超過人数分の調整金
常用労働者100人以下で、障害者を常用労働者の4%、または6人のうち多い数を超えて雇用している企業 月額21,000円×超過人数分の報奨金

在宅就業障害者・在宅就業支援団体に業務を依頼した事業主に対して特例調整金、特例報奨金を支給

在宅就業障害者や、または在宅就業支援団体を介して仕事を発注し、支払いをした事業主に対し、特例調整金、または特例報奨金が支給されます。
在宅就業支援者の支援のためのもので、自社の雇用でない発注に対する制度。金額などは厚生労働省や行政機関に確認してください。

各種助成金を支給

事業主が障害者雇用にあたって、設備の整備や雇用管理のために必要な介助をつける措置などを行った場合、内容に応じて助成金が支給されます。助成金には、例えば次のようなものがあります。

障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

エレベーターの設置など、障害者の雇い入れや継続雇用に必要な施設、福利厚生施設を設置した場合に支給。

障害者介助等助成金

職場介助者を配置する、手話通訳を雇用する、障害者相談窓口担当者を置くなど、適切な雇用管理のための配慮を行った場合に支給。

重度障害者等通勤対策助成金

通勤用バスの購入や会社に通いやすい住宅の賃借、バスの運転手の雇用など、重度障害者の通勤対策を行った場合に支給。

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度障害者を多数雇用する事業主が、必要な設備の整備や施設の設置を行った場合に支給。

障害者雇用納付金の注意点

ここまで制度について紹介してきましたが、障害者雇用納付金は「法定雇用率を達成していない企業への罰金ではないか」「納付金を払えば雇用義務を果たしたことになる」と誤解されるケースも少なくありません。障害者雇用納付金とは、障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業の経済的な負担を調整するために支払うものであり、法定雇用率を達成できなかった罰金ではないのです。
たとえ障害者雇用納付金を支払っても、障害者雇用義務を果たしたことにはならず、未達成状態が続くとハローワークの雇用率達成指導を受けたり、企業名を公表されたりすることがあります。

まとめ:社会的責任を果たし、障害者雇用の促進と安定に貢献

障害者雇用納付金制度は、「障害者雇用は社会全体で考えるべき問題であり、企業が共同で果たしていくべき責任である」との考え方を基本としています。雇用する側として、制度の意義を正しく理解し、雇用を推進していくことが大切です。