障害者雇用とは、障害者基本法の基本理念で定められている通り、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するための取り組みです。
そして、雇用分野に関する法律である障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定を図るため、民間企業や国、地方公共団体などに対し、常時雇用している労働者の一定割合に相当する人数以上、障害者の雇用を義務付けています。
このように、企業にとって障害者雇用は法的義務として、社会的責任を果たすための施策ですが、実際のところ、どんな方を、何人以上雇う必要があるのでしょうか。この人数を算出するのが、障害者雇用率となります。
2021年3月から引き上げられた障害者雇用率(法定雇用率)を踏まえて、具体的に雇用すべき人数の計算方法や、障害のとらえ方などについて見ていきましょう。

(※2021年6月23日更新:実労働時間が所定労働時間を下回る場合の計算方法を追記しました)

目次

障害者雇用率制度とは

障害者雇用率制度とは、民間企業や国、地方公共団体は、障害者雇用率に相当する人数以上の障害のある方を雇用しなければならないとする制度のことです。
その歴史は古く、障害者雇用促進法の前身である身体障害者雇用促進法が制定された1960年に、企業や国、地方自治体の努力義務として登場。1976年の法改正により法的義務となり、その際に障害者雇用率は1.5%と定められました。以後、何度か改正が行われ、1988年には1.6%、1998年には1.8%、2013年に2.0%、2018年4月に2.2%、2021年3月からは2.3%へと段階的に引き上げられてきました。

以上は民間企業の場合であり、この障害者雇用率は事業主の区分によって若干異なります。

2021年3月以降からの事業主別の障害者雇用率は次のようになっています。
・民間企業…2.3%
・国、地方公共団体等…2.6%
・都道府県等の教育委員会…2.5%

民間企業の場合だと、従業員43.5人以上の事業主は障害者雇用の義務を負っていることになります。
今後も雇用率は段階的に引き上げられることになっています。

障害者雇用率の計算式

障害者雇用率は、次の計算式によって算出されます。

なお、社会の変化を反映するため、障害者雇用率は5年ごとに見直しが行われています。

企業が雇用すべき障害のある方の人数の計算方法

それでは、障害者雇用率を使って、実際に自社で雇用すべき障害のある方の人数を計算してみましょう。
自社で雇用すべき障害のある方の人数は、次の計算式で求められます。

自社の法定雇用障害者数(障害者の雇用義務数)=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.3%)

式中の「常用労働者」とは、1週間の労働時間が30時間以上の方、「短時間労働者」とは、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。なお、それより1週間の労働時間が短いアルバイトやパートの方などはカウントしません。
例えば、8時間勤務の正社員が100人で、週20~30時間勤務のパート従業員が20人いる場合、自社で雇うべき障害のある方の数は(100+20×0.5)×2.3%=2.53。小数点以下の端数は切り捨てとなるので、この場合は2人となります。

雇用対象となる障害のある方の数え方

障害者雇用率制度の対象となる障害のある方は、身体障害者、知的障害者、精神障害者です。以前は身体障害者と知的障害者だけでしたが、2018年4月の改正により精神障害者も雇用率算定の対象に加わりました。
これらの障害のある方1人を雇ったときに何人分としてカウントするかは、障害のある方の障害の程度と、1週間に何時間はたらくかによって決まってきます。カウント方法は次のとおりです。

障害者雇用率を算出する際の障害のある方のカウントのルール

  • 原則として、常時雇用労働者は1人分、短時間労働者は0.5人分としてカウントする。
  • 重度身体障害者・重度知的障害者は1人を2人分としてカウントする。なお、重度身体障害者・重度知的障害者の短時間労働者は、1人分としてカウントする。
  • 短時間労働者の精神障害者に関しては、2018年4月から設けられた特別措置により、下記の要件をどちらも満たす場合は1人分、満たさない場合は0.5人分とカウントする。

<要件>

  1. 新規雇い入れから3年以内、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の場合
  2. 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得した場合

もしも、雇用すべき障害のある方の人数が2人なら、「常時雇用労働者2人」「短時間労働者2人と常時雇用労働者1人」「常時雇用の重度身体障害者1人」といった雇い方が考えられます。

ちなみに、欠勤や遅刻等で実労働時間が所定労働時間を下回る月が年間の半分以上(7カ月以上)ある場合、実労働時間が参考となります。例えば、週所定労働時間が30時間以上の常用労働者の場合、月120時間に満たない月が年間の半分以上あると、「常用労働者数」も「雇用障害者数」も0.5カウントとなります。週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合では、「常用労働者数」にも「雇用障害者数」にもカウントされなくなります。

また、月によって出勤日数が異なり、所定労働時間に満たない場合があります。例えば営業日数が少ない2月のように、労働時間が120時間(80時間)を下回る場合は、「2月の労働日数×6時間(短時間労働者の場合は4時間)=所定労働時間」となります。

障害の種類や程度の判断基準

  • 身体障害者
    身体障害者福祉法による「身体障害者手帳」を所持している方。障害の程度によって等級が1~7級でしるされている。
  • 知的障害者
    都道府県知事が発行する「療育手帳」を所持している方。障害の程度によってA「最重度」「重度」B「中度」、C「軽度」に区分されている。
  • 精神障害者
    精神保健福祉法による「精神障害者保険福祉手帳」を所持している方。障害の程度によって等級が1~3級でしるされている。

このうち、身体障害者手帳の等級が1級・2級の人は重度身体障害者に、療育手帳の区分がAの人が重度知的障害者に該当します。なお、精神障害者には、雇用上人数のカウント方法が変わる区分はありません。

障害の把握・確認の際の注意点

障害のある方の採用にあたっては、障害者手帳に基づいて、障害の有無や程度、どのような障害特性があるのかを確認することは欠かせません。しかし、障害を確認する際には、相手のプライバシーに十分配慮することが重要です。

この点については、厚生労働省から「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が出されています。
ガイドラインで明記されているポイントをご紹介します。

<プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインのポイント>

  • 採用段階で障害のある方の把握・確認を行うには、利用目的等の事項を明示した上で、本人の同意を得て、目的のために必要な情報を取得すること
  • 採用後に把握・確認を行うには、雇用する労働者全員に対して、メール送信や書類の配布といった画一的な手段で申告を呼びかけることを原則とする

雇用した障害のある方の数が法定雇用障害者数より少ない場合

企業が雇用している障害のある方の数が、本来雇うべき法定雇用障害者数に届いていない場合、事業主は障害者雇用納付金として不足1人につき月額50,000円を納める必要があります(※1)。ただし、この納付金は企業間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図るために納めるもので、罰金ではありません。納付金を払っても障害のある方を雇用する義務がなくなるわけではないので、その点は注意してください。
なお、逆に法定雇用障害者数を超えて雇用している場合は、超過1人につき月額27,000円が支給されます(※2)。

※1 適用対象は常用労働者100人超の事業主。ただし、常用労働者が100人超200人以下の場合は月額40,000円になります。
※2 適用対象は常用労働者100人超の事業主。常用労働者が100人以下の事業主は別途報奨金制度があります。

まとめ:まずは自社の法定雇用人数を把握するところから始めましょう

一定数以上の従業員を雇用する事業主は、法定雇用率以上、障害のある方の雇用をしなければならない義務があります。 自社で障害のある方を何人雇用する義務があるのかこの記事を参考に、まずは自社の法定雇用障害者数を計算することから始めてみてはいかがでしょうか。