民間企業における障害者の法定雇用率は、2021年3月より2.3%に引き上がり、今後も更なる引き上げが予想されます。
民間企業や障害種別の雇用状況や傾向について、厚生労働省などが発表しているデータをもとに紹介していきます。

(※2021年3月10日更新:
・法定雇用率の数値を更新しました。
・厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」令和2年の数値に更新しました。
・厚生労働省「障害者の職業紹介状況」令和元年度の数値に更新しました。)

目次

民間企業における障害者雇用

厚生労働省が2021年1月に発表した「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業の障害者雇用数は578,292人(対前年比+3.2% 17,683.5人増加)、実雇用率は2,15%(同+0.6ポイント)となり、過去最高を更新しました。
障害別で見てみると、身体障害者は356,069.0人(対前年比0.5%増)、知的障害者は134,207.0人(同4.5%増)、精神障害者は88,016.0人(同12.7%増)で、特に精神障害者の伸び率が高くなっています。

民間企業における障害者の雇用状況

出典:厚生労働省発表 「令和2年 障害者雇用状況の集計結果」

なお、法定雇用率を達成した企業の割合は48.6%となっており、半数は達成できていないという状況です。

求職申込・就職件数の変遷と障害別の傾向

2009年度(平成21年度) 2019年度(令和元年度)
新規求職申込件数 就職件数 新規求職申込件数 就職件数
全体 125,888 45,257 223,229 103,163
身体障害者 65,142 22,172 62,024 25,484
知的障害者 25,034 11,440 36,853 21,899
精神障害者 33,277 10,929 107,495 49,612

出典:厚生労働省発表  「令和元年度 障害者の職業紹介状況」

この図は、厚生労働省が発表した2020年6月に発表した「令和元年度 障害者の職業紹介状況等」を基に、障害者の新規求職申込件数と就職件数を2009年度と2019年度を比較してまとめたものです。
新規求職申込数および障害者の就職件数は増加する結果となりました。

障害別でみると、これまでの障害者雇用で主力だった身体障害者の件数は依然として多いものの、減少していることがわかります。一方、精神障害者は、2018年4月より雇用義務の対象となったことや、認知度が高まり受診への抵抗感が薄れ手帳(精神障害者保健福祉手帳)の所持者数が今後も増加すると推定されることから件数が急増しており、今後も精神障害者の求職者申込件数・就職件数は急増するとみられています。

障害種別の年齢構成を見ると、身体障害者は6割弱が65歳以上であり、高齢化が進んでいることから、労働市場における実数と構成比も縮小していくでしょう。若手の、業務スキルの高い身体障害者を採用したいというニーズは依然として高いですが、各社の採用ターゲットが集中することで、今後は雇用が難しくなることが予想されます。
一方、精神障害者は、上に述べた通り、認知の広がりや手帳所持者の増加によって20代から30代の若手層、40~50代の層が多くなっています。
今後は、精神障害者をはじめ、これまで採用してこなかった層の雇用が増加すると考えられます。

障害者の年齢構成

身体障害者と精神障害者の年齢構成比較

出典:厚生労働省発表「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果

今後必要となる障害者雇用数と、現在の雇用状況から見た母集団規模

上昇した法定雇用率を実現するために、民間企業ではどれくらいの人数を雇用する必要があるのでしょうか。厚生労働省が発表したデータをもとに弊社が推計したところ、2.3%の実現には15.1万ポイント、14.3万人の雇用増加が必要であるとみています。しかしながら、現在、各企業が主な採用対象者と考えている層を母集団化できる規模は約13万人程度で、14.3万人を下回るのではないかと考えられます。 (※ハローワーク経由で12.4万人+有料職業紹介やその他で約7千人、合計13.1万人雇用率の上昇で新たに雇用しなければならない障害者数(2.3%で14.3万人)を勘案すると採用母集団と必要雇用数が逆転することも推計され、母集団の不足状態が推測されます)

企業の雇用モデル分布 大企業と中小企業の違い

民間企業での雇用モデルについて、下の分布で考えてみます。縦の軸が「業務難易度」で、上に行くほど障害者にとって難易度が高く、下に行くほど難易度は下がります。横の軸は「雇用吸収度」で、右に行くほど吸収度が高く(多くの障害者を雇用できる)なります。

障害者を多く雇用することが求められる大企業は、集合部署や特例子会社で集合雇用し、多様な職種、職域の開発や、標準制度とは独自の人事制度の制定を行うことが多くみられます。一方で中小企業は、事務センターなどの集合部署または一般部署で補助職やアシスタント業務を担当し、標準制度または一部下方拡大した人事制度で雇用することが多くみられます。
雇用の多くは大企業や、一定以上の規模をもつ企業によるものです。大企業は、組織的な受け入れ体制が整い、まとまった人数の障害者を雇用できますが、ほとんどの中小企業は限られた職場環境で最低1人から数人を雇用しなければならない状況です。
企業それぞれの努力だけでは解決しがたいのが現実であり、視点を変えた解決法が模索されはじめています。

今後必要となる、障害者雇用の対策は

今後、企業が障害者雇用を進めるにあたって、どのような対策が必要になるでしょうか。これまで雇用してきた層の採用が難しくなり、雇用を広げる必要がある今、採用したい人材から選ばれる存在となること、これまで採用してこなかった人材を雇用し活用できる組織作りが必要になるでしょう。
既に法定雇用率を達成している企業も、これから雇用を進める企業も、主に以下の4つを考え、取り組んでいくことが大切です。

  • 多様な障害種別の方を受け入れるための意識改革
  • これまでとは違う職種・職域で採用するための準備
  • 採用方法の見直し・再整備
  • 受入体制の見直し・再整備