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パーソルダイバース(旧:パーソルチャレンジ)では、法改正による後押しもある「短時間勤務を活用した障害者雇用の推進」の実現に向けて、企業側・短時間勤務を希望する障害のある方、双方への支援を行っています。
その中で2022年12月に「障害者の短時間雇用に関する企業の意識や取り組みの成果」に関する調査を実施しました。調査結果をもとに、企業の雇用実態や現状の課題や成果などを分析のうえ発表します。

法改正で「短時間勤務による障害者雇用」を推進

厚生労働省は、週の所定労働時間20時間以上30時間未満の精神障害者を1人としてカウントする特例措置「精神障害者の算定特例」について、2023年4月以降も継続する方針を明らかにしました。
また、2024年4月からは「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の改正に伴い、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度の身体障害者・知的障害者及び精神障害者も、実雇用率の算定対象に加えることを決定しています。
障害者側の多様な就労ニーズを踏まえたはたらき方が推進される中で、短時間勤務での雇用が注目されています。

調査結果:「20時間以上30時間未満」の勤務、精神障害では33.6%

パーソルダイバース(旧:パーソルチャレンジ)では2022年12月に「障害者の短時間雇用に関する企業の意識や取り組みの成果」に関する調査を実施しました。
障害のある方を雇用する企業担当者141名の回答をもとに、自社での障害種別ごとの雇用状況と1週間あたりの勤務時間をまとめました。

その結果、1週間あたりの勤務時間については、いずれの障害種別でも「30時間以上」が9割前後を占め、「~20時間未満」は1割程度となっています。その中で「20時間以上30時間未満」の勤務に着目すると、特例措置があるために法定雇用人数1人としてカウントができる「精神障害のある方」のみ3割を超え、他の障害種別よりもプラス10ポイント以上となりました。

2018年4月に施行された「精神障害者の算定特例」を活用し、対象者を雇用した企業は約3割

「精神障害の方を雇用している」と回答した企業のうち、2018年4月から施行された特例措置(※)を活用した企業は約3割にとどまりました。一方、活用していない企業は6割を占め、特例措置が十分に活用されていない状況が浮き彫りとなっています。

民間企業における障害者雇用状況

※精神障害者で週20時間以上30時間未満の短時間労働者(条件あり)の雇用率算定方法について、対象者1人につき、従来0.5カウントを1カウントとする。
【条件1】新規雇入れから3年以内の方または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方。かつ、
【条件2】2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方。

算定特例の活用、「就業意識のすり合わせが重要」との回答8割

「精神障害者の算定特例を活用した」と回答した企業に、活用にあたり感じた課題や成果などを複数回答で尋ねると、「対象社員と就業意識のすり合わせが重要」では、「そう思う」が約8割を占めました。ここでいう就業意識とは、「短時間からフルタイム移行」「業務内容や量」についてです。

2018年の特例措置活用企業の意識

他にも、「精神障害者の算定特例」を活用した企業からは、以下のような回答が得られました。

「条件とのマッチング・会社方針」について

  • これまでに障害者雇用の事例がなく、短時間の方から始める方針とした(100~499人、サービス)
  • 本人の希望勤務時間と特例措置が一致するケースが多く、対応すべきと判断(1,000人以上、卸売・小売り)

就業意識のすり合わせに関する知見について

  • 最初からフルタイムを希望する方に対して、まず短時間から勤務に慣れてもらうことが可能となった。フルタイムを希望する方には、状況を見て延長可能であることを伝え安心感を持ってもらった(1,000人以上、卸売・小売り)

特例措置を活用した成果について

  • 短時間労働のため社内理解が厳しかったが、特例措置を意識した社内になってからは障害者雇用に対する理解も少しずつ変化してきた(500~999人、運輸業・郵便)

特例措置を活用するにあたっての課題・意見について

  • 会社も障害者の方も様子見できるという点で、利用しやすい制度だと思う。特例措置期間が過ぎた後、勤務時間を増やしていくか検討が必要だが、会社全体として業務の効率化が進んでいることもあり、ご本人の症状や能力を考慮すると新たな業務の掘り出しが今後の課題(499人、サービス)

2024年4月の法改正による新制度について、活用を検討する企業は3割超

2024年4月からの法改正により、実雇用率算定対象となる「週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者・知的障害者及び精神障害者」の雇用を検討したいかについて、「そう思う」と回答した企業は3割強でした。他方で、「どちらとも言えない」と中立的な回答も3割強と、ほぼ同率に。活用意欲はあるものの、制度に対する知識や理解不足などがあると推測されます。さらに、「そう思わない」が2割強という結果でした。

短時間勤務障害者の雇用を検討する理由は、「柔軟なはたらき方の推進」と「多様な人材の活躍や定着のため」

「週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者・知的障害者及び精神障害者」の雇用を検討している企業に、雇用を検討する理由を尋ねたところ、次のような回答を得られました。

柔軟なはたらき方の推進について

  • DEIの観点で有用と考えるため(情報通信、1000人以上)
  • 新たな雇用の可能性が広がることに加え、高齢化やパフォーマンス低下の既存従業員に対して、柔軟なはたらき方の提案が可能となるため(~99人、サービス)

法定雇用率達成について

  • 法定雇用率を割っており、不足分を採用するためにいろいろな可能性を試していきたい(100~499人、医療・福祉)

ニーズについて

  • 現在短時間勤務は原則採用を行っていないが需要があるならば対応も必要と考えている(1,000人以上、製造業)

雇用を検討しない理由は、「業務の確保が難しい」や「職場環境や仕組みが整っていない」が多数

調査結果より、障害のある短時間勤務者の雇用を検討しない理由を尋ねると、「業務の確保が難しい」が7割近くとなり、次いで「定着・活躍できる職場環境・仕組みが整っていない」が約6割になりました。アンケート回答より、企業が感じている課題点を一部ご紹介します。

業務の確保・業務内容に関する課題

  • 週20時間未満で任せられる、障害者の方が執務可能な担当業務を切り出せない(製造業、100人~499人)
  • 賃金形態の整理が難しい。障害の有無に関わらず任される仕事の難易度が高く、短時間勤務であればなおさら業務の振り分けが難しい(金融・保険、1,000人以上)

体制に関する課題

  • 現在、部内に新たにグループを作り集合型として精神障害者を雇用しているが、定着への支援体制がギリギリの ため、重度の障害者を対応できる人員を確保できないと思われる(金融・保険、500~999人)

障害のある短時間労働者の雇用に関する質問や相談、ご意見

最後に、フリー回答に寄せられた障害のある短時間労働者の雇用に関する質問や相談内容の一部をご紹介します。

  • 長時間で1名採用できるほど仕事量がない場合が多いが、短時間であればもう少し柔軟に対応できそうに思う(製造業、500人~999人)
  • 当社の障害者採用に関する募集要件は、数年たってもあまり変わらず、特に精神障害や知的障害の方を雇用するハードルはまだまだ高い。会社の考え方と、採用担当者個人の考え方のギャップをどのように小さくしていくかいつも悩ましい(製造業、1,000人以上)

まとめ

調査の結果、短時間勤務による障害者雇用は自社の「はたらき方の多様化」「多様な障害者の受け入れ定着・活躍」のためにも取り組む意義があると考えられていることがわかります。一方で、実際に雇用を検討する際には、「社内理解」や「業務、職場環境の整備」が大きな課題となる様子が伺えます。

また課題の中でも「業務(創出・切り出し)」は、短時間勤務による雇用に限らず、障害者雇用を進めるにあたって最も多く聞かれる課題の一つです。実際、当社にも「雇用を推進したいが、任せる仕事がない」「専門性の高い業務ばかりで業務が切り出せない」といったご相談を多くいただいています。

当社では短時間勤務の障害者雇用における課題や雇用フェーズに応じ、きめ細かなご支援を提供します。

障害者の法定雇用率に関し、段階的な引き上げ(2024年度から2.5%・2026年度から2.7%)が迫る中、各社様では人的リソースが限られているケースも多いかと思います。
障害者雇用にお困りごと・ご相談があれば、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

<調査概要>
■調査名:障害のある短時間労働者の雇用に関する調査
■調査方法:自社取引先に対するインターネットリサーチ
■調査対象:障害者雇用を実施する全国の企業担当者
■調査期間:2022年12月1日(木)~12月9日(金)
■有効回答数:141人(採用担当者が7割)
■実施主体:パーソルチャレンジ株式会社(現:パーソルダイバース株式会社)