パーソルダイバースの現場コンサルタントによるコラム。今回はコロナ禍で急遽テレワークを取り入れた企業様へのご支援事例です。障害のある社員のテレワーク・在宅勤務について、マネジメントのポイントをご紹介します。

障害者雇用におけるテレワークの課題とは

今回は、障害者雇用においてもテレワークを取り入れたG社へのご支援事例です。
コロナ禍に急遽テレワークによる在宅勤務を取り入れたG社では、全社員に対して週3日の在宅勤務を指示しました。導入当初は全社員が試行錯誤しながら在宅勤務に取り組んだといいます。

数カ月が経過したころ、G社の人事担当者より「障害のある社員のテレワークについて相談したい」とご連絡をいただきました。

G社のように、コロナ対策の一環としてテレワークへの対応を迫られた企業は少なくないでしょう。
試行錯誤する中で見えてきた、障害者雇用におけるテレワークの課題とは何か。G社が不安に感じたポイントや実際に取り組まれた対策をご紹介いたします。

障害者雇用でのテレワーク活用に課題を感じている担当者へのヒントとなれば幸いです。

マネジメントと合理的配慮が適切に行えているかが懸念点

障害のある社員のテレワークについて、G社で懸念されていたのは次の2点でした。

テレワークにおいて、
1.障害のある社員へのマネジメントが充分に実施できているか?
2.必要な合理的配慮が適切に行われているか?

それぞれの懸念点について深掘りしてヒアリングしたところ、どのようなポイントで不安を感じているかが見えてきました。

1.障害のある社員へのマネジメントが充分に実施できているか?では、これまでは同じ空間ではたらく様子が見えていたため、何かあってもすぐに声がけやコミュニケーションがとれました。ところがテレワークが多くなると「パフォーマンスをしっかり発揮できているのか?」反対に「無理に仕事をしすぎていないか?」などが管理者からは見えにくくなってしまいます。テレワークでは直接に障害のある社員の様子が見えないため、適切なマネジメントが実施できているのか?という不安につながっていました。


2.必要な合理的配慮が適切に行われているか?では、テレワークの導入によってはたらく環境が変化したことが影響していました。一部の障害のある社員と入社時にすり合わせをした合理的配慮の内容が、テレワークでは物理的に難しくなってしまったという事例があげられました。

物理的に難しくなった合理的配慮の例
・新規業務依頼時には見本を見せる
・業務進捗について細かな確認をし合う など

国土交通省「令和元年度テレワーク実態調査(2020年3月実施)」の新型コロナウィルス感染症対策におけるテレワーク実施実態調査よると、G社に限らずコロナ禍でテレワークを導入した企業の約8割は何かしらの課題を感じたという結果が出ています。
実際にパーソルダイバースにも、多くの企業から「テレワークによる在宅勤務だと、障害のある社員の様子が見えず、マネジメントや合理的配慮ができない」という相談をいただきました。

「マネジメント勉強会」と「障害のある社員へのヒアリング」を実施

G社では「はたらく姿が見えない」という状況が、テレワークにおけるマネジメントや合理的配慮への不安につながっていました。しかし本当に目の前にいないとマネジメントや合理的配慮はできないのでしょうか。


G社のご相談に対してパーソルダイバースより提案したのが、「テレワークにおけるマネジメントポイントの勉強会」「障害のある社員へのヒアリング」です。

偏見を払拭するためのマネジメントポイント勉強会

「テレワークにおけるマネジメントポイントの勉強会」では、まずこれまでの出勤・出社が当たり前の環境ではなくなり、はたらき方の前提そのものが変わるということをお伝えしました。その上で、ご相談いただいた課題について、障害者雇用とテレワークそれぞれへの偏見がないかを確認しその一部を表にまとめました。

テレワークに対する偏見 障害者雇用に対する偏見
・さぼる人が多いのではないか?
・目の前にいないとマネジメントができない など
・軽作業や補助業務に限定
・身体障害者は勤怠が安定している
・精神障害者は勤怠が不安定
・目の前にいないと配慮ができない など

勉強会を通して、参加者からは「テレワークに対する偏見」「障害者雇用に対する偏見」その両方に気がつけたという声が多く寄せられました。

以下、参加者の代表的な感想です。
・これまでは「目の前でしっかりはたらいている様子を見ること=マネジメントができている」と思っていたかもしれない
・「サボる」「パフォーマンスを出せるか」という観点に、障害の有無は関係ない
・「精神障害があるから相談できないと不安だろう」という思い込みがあった など

合理的配慮を見直すきっかけになる「障害のある社員へのヒアリング」

勉強会に続いて取り組まれたのが、「障害のある社員へのヒアリング」です。
ご相談の経緯にもなった社員に、「テレワークにおいて合理的配慮は適切に行われているか」と尋ねたところ、入社時に合意を得た合意的配慮は3年も前の内容だったことがわかりました。業務内容に慣れ、さらにはたらき方が大きく変わった現在も、ご本人は同じ配慮内容を求めているのでしょうか。
ヒアリングへの回答では「新規の業務依頼時については見本を見せてもらえるとありがたいものの、業務進捗についての細かな確認については、イレギュラーな事態が生じた際に相談できればいいと思っていた」とのことでした。

また、テレワーク環境になってからの困りごとを確認すると、出社時に使用している持ち出し禁止の冊子マニュアルに関する課題点が見えてきました。「頻度が低い業務で確認事項が生じた場合には、出社日を待たなくてはならない」「他の方に聞かなくてはいけないのが申し訳ない」との申し出があり、G社では以下の対策に取り組むこととなりました。

・冊子マニュアルは部署の方のみ閲覧可能なフォルダにデータ格納をする
・業務報告のフローを整理
(緊急度が高い場合は上司の会社携帯へ電話、通常の報告は終業時の業務報告メール)

障害のある社員へのヒアリング結果から、G社ではテレワークでは出社勤務時とは異なる配慮が必要になることが認識されました。加えて、入社時の合意的配慮については適宜アップデートが必要であることにも気がつくことができました。

テレワークのパフォーマンス向上とともに「柔軟なはたらき方」を実現

G社では勉強会によって、現時点で管理・指導者の方々が感じている課題の大部分はテレワークや障害に対する偏見によるものだと認識されました。マネジメントについては、評価ポイントや情報連携の方法などを、テレワークが普及した現在のはたらき方を前提にアップデートし、あらためて全社員へ共有されています。

G社ではテレワークをきっかけにマネジメントや合理的配慮の本質に気づくことができ、全社として「誰もがはたらきやすく、平等に評価される」という観点での議論が活発になりました。新型コロナウイルス感染症の大流行が落ち着いてきた現在も、テレワークによる在宅勤務の制度は継続し、出勤が負荷になっていた障害のある社員のパフォーマンス向上にもつながっています。さらに、子育て中の社員や家族の介護が必要な社員にとっても、柔軟なはたらき方の一つになっています。

自社でのノウハウを活用しテレワークによる障害者雇用をサポート

テレワークでの障害者雇用に課題や不安を感じていませんか?
テレワークは「これまでの当たり前」を見直すことで、会社全体のはたらきやすさ、パフォーマンス向上につながる可能性を秘めています
 
自社で障害者雇用を推進している、また多くの企業様のご支援をしているパーソルダイバースだからこそ、ノウハウをもとにテレワークによる在宅勤務体制の構築や合理的配慮の見直しをサポートすることが可能です。ぜひご相談ください。

障害者雇用に関する法人向けサービスのご紹介です。
障害者雇用を取り巻く環境変化を常に把握し「持続可能な雇用」に向けて、貴社の雇用経験やニーズ、抱える雇用課題に合わせたサポートをご提供いたします。
まずはお気軽にご相談ください。