厚生労働省は6月9日、雇用施策と福祉施策の連携による障害者就労支援の更なる充実・強化を目指す「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」の報告書を公表しました。その中で、検討会で議論された、障害者の就労能力等のアセスメントにおける現状の課題と今後の在り方、解決の方向性が提示されています。

アセスメントの現状課題と今後の方向性

厚生労働省では、障害者就労支援の更なる充実・強化のため、雇用施策と福祉施策がそれぞれ抱える課題を連携して議論し、具体的な解決策の方向性を示す「障害者雇用・福祉連携強化プロジェクト」が発足し、検討会が定期的に開催されてきました。
検討会では障害者の就労支援体系の在り方や就労を支える人材の育成・確保とともに、障害者の就労能力等のアセスメントの在り方について議論されました。

検討会では、福祉支援機関やハローワークなどの雇用施策側で実施されているアセスメントの課題として、

  • 就労系障害福祉サービスや職業リハビリテーション等の様々なサービスがある中で、障害者にとってどのサービス利用が適切かの客観的判断がなく、現場担当者に任せられている。
  • 障害者本人や支援者が、本人の就労能力や一般就労の可能性を十分に把握できておらず、適切なサービス利用に繋げられていない。
  • 特定のサービス利用前提とした形式的、事前手続き的に終始している一面がある。
  • ハローワークも統一的な評価で求職支援が行われていると言えない状況がある。

などの課題が挙げられました。

そこで、アセスメントの目的を「一般就労の実現に向け、障害者本人ニーズを十分に踏まえたうえで、納得感のあるサービス等を提供するために実施すること」と整理したうえで、支援を行う関係者が同じ方向を向き、一般就労の実現とその質の向上という共通の目標を持って努力する必要があると整理されています。
その上で、具体的な改善案として

  • 福祉・雇用それぞれのサービスを選択・決定する前に、共通の枠組みでアセスメントを実施すること
  • アセスメントは面接や関係機関からの情報収集、標準ツールを用いて実施し、その結果を関係者で共有するとともに、サービス利用開始後も実施機関等に引き継がれること
  • アセスメントの質担保のため、担当する人材の能力・スキル育成や第三者の関与すること

などが提議されました。
また、就労にあたっては、企業が提供する合理的配慮、環境面、求める人材要件や能力の確認と、障害特性や志向性にも留意するべきという指摘も出されています。
今後、検討会での内容を踏まえ、具体的な施策について更に議論されることになっています。

企業におけるアセスメントは、採用と定着・活躍実現のために行う

障害者雇用におけるアセスメントとは、障害者が就業を通じて定着、活躍するために、人材を適切かつ客観的に見極め、評価することです。
就労系障害福祉機関におけるアセスメントでは、主に「就労できるかどうか」を評価しますが、雇用する企業におけるアセスメントでは、就労できるかどうかに留まらず「企業で採用し、はたらくことを通じて、企業の一員として価値を創出できる人材か」を評価する必要があります。
具体的には「用意した業務に従事できるか?」「その業務に必要な職務能力や経験があるか?」「業務を通じて企業が求める価値発揮ができるかどうか?」「上司からの指示や報連相、同僚とのコミュニケーションができるか?」などを見極める必要があります。
アセスメントのためには、自社の障害者雇用目的やアサインする業務、雇用形態を踏まえた上で、定着・活躍できる人材要件を明確にする必要があります。定めた人材要件を基に採用活動を通じてアセスメントを実施すること、また、採用後の人材戦略においては、適切な目標設定と人事評価における評価基準の見極めのために実施することが求められます。