障害者雇用担当者のためのLGBT基礎知識~LGBT当事者である障害者の雇用~

ダイバーシティ&インクルージョンの推進や社会的理解の広がりにより、LGBTをはじめとする性的マイノリティ(※以下、「LGBT」と記します)への理解や、はたらきやすい職場環境づくりのニーズが高まっています。LGBTは障害ではありませんが、障害者の中にもLGBTの当事者がおり、採用活動や就業において、企業が理解しておくべきポイントがあります。そこで今回は、障害者雇用の採用担当者向けに、LGBTについての基礎知識や向き合い方、採用時のポイントや、採用後の就業におけるポイントについて、当社のご支援事例をもとに紹介します。

はじめに:LGBTを知る

LGBTとは、「Lesbian(レズビアン)」「Gay(ゲイ)」「Bisexual(バイセクシュアル)」「Transgender(トランスジェンダー)」の頭文字をとって組み合わせた言葉で、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称です。

レズビアンは「同性を好きになる女性」、ゲイは「同性を好きになる男性」、バイセクシュアルは「異性を好きになることもあれば、同性を好きになることもある」という、「性的指向」を表しています。自分の意思で選び取るというより、多くの場合、思春期の頃に「気づく」ものと考えられています。

トランスジェンダーは「生まれた時に出生届に書かれた性別と一致しない性別を生きる、あるいは生きようとしている人」のことです。自分の性をどのように認識しているかという「性自認」において、「からだの性」と「こころの性」が一致しないことから、自身の身体に違和感を持ちます。多くの場合、「こころの性」にそって生きたいと望むようになるようです。

LGBTは、「性的指向」と「性自認」の中で少数派だというだけで、障害ではありません。日本では、トランスジェンダーと、医学用語である「性同一性障害」を結びつけて、LGBT全般を「障害」と捉えている人も少なくありませんが、これは間違った認識です。WHOをはじめ世界では、出生時に割り当てられた性別への違和は「病気」や「障害」ではないと宣言しており、「性別違和」「性別不合」と呼んでいます。

セクシュアリティを表す4つの要素

セクシュアリティとは、出生届に書かれた身体的特徴の「からだの性」、自覚をしている(性自認)「こころの性」、洋服や髪型などで表現する「ふるまう性」、魅力に感じる(性的指向)「好きになる性」という4つの要素で表します。全てのセクシャリティは、この4つの掛け合わせで構成されています。

LGBTの他にも、こころの性が男性・女性に限られない人を「X-gender(エックスジェンダー)」または「Non-binary(ノンバイナリー)」と言います。ノンバイナリーは性自認だけでなく、性表現においても、男性・女性の枠組みを当てはめないセクシュアリティです。また、こころの性と生まれたときに割り当てられた性別が一致している人(トランスジェンダーの対義)を「Cisgender(シスジェンダー)」と言います。

セクシュアルマイノリティの割合

セクシュアルマイノリティの割合は「13人に1人」と言われ、これは左利きやAB型と同じ割合です。クラスに2~3人いるようなイメージですが、まわりに打ち明ける人は少なく、実際の感覚ではもっと少なく感じたり、見えにくかったりします。また、セクシュアルマイノリティであるという人の中には障害のある人も当然含まれます。

性的指向や性自認は、「性の在り方」「社会的・文化的につくられる性差(概念)」を示すものであり、これは全ての人に当てはまります。「誰もが当事者である」という視点から考える必要があるでしょう。

LGBT当事者と向き合う

LGBT当事者と向き合うポイントは「ありのままを認めること」そして「確認する」の2つです。

(1)無意識の偏見に気づき、ありのままを認める

LGBT当事者に対する偏見や無作法、無神経な態度は当然、控えるべきですが、過度に配慮しすぎるのもよくありません。大切なのは「ありのままを認めること」です。「なるほど、そうなのか」と受け入れるくらいで十分でしょう。

先述した通り、セクシュアルマイノリティの割合は、左利きやAB型と同じ割合と考えられています。つまり、自分が知らないだけですぐ近くに当事者がいる可能性もあり、“無意識の偏見”=「アンコンシャス・バイアス」によって、自分の無意識な行動や発言から、気づかぬうちに相手を傷つけていることがあるかもしれません。まずは、自分自身の中の無意識に存在しているアンコンシャス・バイアスに気づくことから始めてみましょう。それがLGBTへの理解につながります。

(2)相手に確認する

自分の発言によって相手が反応に困っている様子を見て、「受け入れられていない」と感じる人もいます。周囲の人は、カミングアウトした相手を気遣うあまりに遠慮してしまうこともあると思いますが、疑問に感じたことは相手に「確認する」ことが大切です。例えば、「このようなことを聞いても失礼ではないですか?」と前置きしたうえで確認する、「そうとは知らずすみません」「教えてくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えるなどです。聞く・伝えることは相手への理解を示すことにもなります。

LGBT当事者で障害のある人の苦労や不安とは

LGBT当事者で障害のある人の中には、2つのマイノリティを抱えていることで、乗り越えるべきものが多いと感じている人もいます。
企業ではたらく当事者からは、「会社や部署から受け入れられていない」「理解されていない」「疎外感を感じる」などの苦労や不安を耳にすることがあります。例えば、同僚と恋愛や休日の過ごし方などのプライベートな話題になったとき、周囲と話を合わせるために本意ではない意見を言い、本当の自分との間で葛藤を抱えてしまう人もいます。一方、カミングアウトはしたものの、偏見によって気まずさを感じる人も少なくありません。また、制服の着用を求められる際や、トイレの利用時にどちらを利用すべきか迷うなど、ハード面の問題で悩む人もいます。

トイレに関しては、多目的トイレや誰でも利用できるトイレを設けて対応している企業もみられます。しかし、当事者のすべての希望に応える対策をすぐに用意するのは難しいでしょう。当事者が何を気にしていて、どのような配慮を必要としているかは人により異なります。従って、企業や共にはたらく同僚にとって大切なことは、当事者個人の気持ちに寄り添い、尊重するという意識を持つことです。

採用事例

パーソルチャレンジでは障害者の就職支援にあたり、一人ひとりの特性を詳しくヒアリングし、その人に合った会社や仕事を紹介しています。LGBT当事者である障害者への支援では、LGBTはその人の「アイデンティティ・個性」として理解し、支援することを心掛けています。ここでは当社が実際に支援した当事者の採用事例を紹介します。

LGBT当事者で免疫機能障害者のあるAさん、Bさん採用事例

Aさんが求人に応募した企業では、LGBTへの社内理解がないことが課題となっていました。そのため、採用担当者をはじめとする関係者を含め、LGBTや障害への理解を深めるためのセミナーを提案しました。免疫機能障害には誤解を生みやすいポイントがあるため、正しい知識を伝えることを重視しています。
企業ではセミナーを実施することで、免疫機能障害に対する社内理解を深めることができました。一方、LGBTに対してはさらに理解を深めていくことが望ましいため、今後も継続してセミナーや勉強会を実施いただくようお願いしています。

また、トランスジェンダーであるBさんも、障害に加えてLGBTへの理解のある環境ではたらくことを希望されていました。そこで、就業に置いて必要な配慮として「服装やトイレの希望」「周囲の認知範囲」「異性名の有無」「ホルモン注射の利用有無」を確認すると同時に、応募企業に対して、LGBTに関する勉強会を継続的に実施し、少しずつ社内理解を広めていただくようお願いしました。

採用を見送る企業の中には、LGBTに対する偏見はないものの、雇用実績や知見・知識がないことへの懸念を持つ企業があります。また、上述のAさんやBさんのケースのように、免疫機能障害という障害への理解は得られたものの、LGBTへの理解はまだ十分ではないという企業や、「LGBTは詳しく分からないため、今はなんとなく採用していない」という声も聞かれます。そのため当社では、“なんとなく”の理由を掘り下げ、誤解や偏見を取り除くとともに、本人の希望や配慮を確認していきます。Aさんの場合はゲイという自身のセクシュアリティに対する配慮は不要であることを確認し、入社後に想定される問題についての本人の希望を企業側に明確に伝えることで、理解を得ることができ、採用につながりました。

【免疫機能障害についてもっと詳しく!】

「免疫機能障害の正しい知識と就業上の配慮について、専門医による解説を交えて紹介します。

採用時の留意点

採用時の留意点として、面接時に「配慮してほしいこと」「ストレスを感じにくい就業環境」「自分らしくはたらける環境」について確認することが重要です。特に、トランスジェンダーの当事者には「服装やトイレの希望」「周囲の認知範囲」「異性名の有無」「ホルモン注射の利用有無」についても確認します。長くはたらいてもらうためには、必要事項を適切に確認しましょう。

採用後の定着・活躍のために

障害のあるLGBT当事者が採用後に安心してはたらき、定着・活躍できるためのポイントを2つ紹介します。

(1)研修やセミナーを通じて社内理解を深める

社内全体でLGBTに関する理解を深めるためには、研修やセミナーを実施してLGBTについて知る機会をつくることが大切です。身近なワードや例えで当事者意識を持ってもらうようにしましょう。具体策を考える際は、一緒にはたらく部署の社員を集め「曖昧な知識を整理する」「何が懸念なのかをピックアップする」ためのミーティングや勉強会を定期的に開催すると良いでしょう。

雇用実績のある企業も、実績がない企業でも就業を受け入れる体制や制度・配慮・社内理解を整え、「安定的にはたらける環境」を作っていくことが重要です。

(2)定期面談を行う

入社後は本人と定期的に面談を行い、不安や気になることを確認します。「自分らしくはたらくために、どうすればよいのか」という観点で、周囲へのカミングアウトや必要としている配慮などを確認するとよいでしょう。
カミングアウトについては「カミングアウトによって偏見を持たれるかもしれない」といった不安を感じる人もいます。カミングアウトは“必ずしなければいけないもの”ではなく、また、カミングアウトによって就業不安がなくなるとも限りません。個別性の高い問題であるため、本人の意思を尊重することが重要です。もし社内で信頼できる人が少しでもいる場合は、その人だけにカミングアウトすると良いでしょう。本人の気持ちに寄り添い、一緒に考えていく姿勢で向き合うことが大切です。

まとめ

多様な人々が個性を認め合い、共にはたらく「ダイバーシティ&インクルージョン」は、今後の企業成長に欠かせない概念です。一人ひとりの個性を多様な価値観として受け容れ、ともにはたらく組織作りが求められています。

障害のあるLGBT当事者の採用では、無意識の偏見を取り除き、その人の気持ちに寄り添うこと、そして「どのようにはたらきたいか」を確認することが大切です。「障害があるから、LGBTだから配慮する」ではなく、「お互いが気持ちよくはたらけるためにはどうすれば良いか?」という視点で考えることが大切です。
はたらきやすい環境づくりでは、設備面など全てを整備することは難しいため、LGBTの正しい理解を広める社内研修や勉強会を実施するなど、できることから取り組むと良いでしょう。

パーソルチャレンジでも、社員が中心となってLGBTを積極的に支援、行動するAlly(アライ)活動を行っているほか、任意団体 work with Prideが策定しているLGBTへの取組みの評価指標「PRIDE指標」においてゴールドを取得しています。当社のLGBTへの取り組みや、LGBT当事者である障害者の採用にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。