視覚障害者の雇用状況、職種、仕事内容

厚生労働省が発表した「平成29年の障害者雇用の集計結果」によると、民間企業で雇用されている身体障害者の数は333,454人で、全体の7割弱を占めています。
身体障害者の雇用は、1976年(昭和51年)に創設された雇用率制度により他の障害より先に法定雇用率の算定基準の対象になったということもあり、雇用が最も進んでいます。
しかし、一言で身体障害と言っても様々な障害があり、中では障害に対する正しい理解が進んでおらず、雇用受け入れが進まないものもあります。
今回はその一つと言われる「視覚障害」について考えていきます。

視覚障害者の雇用状況

カテゴリ 新規求職申込件数 有効求職者数 就職件数 就職率
身体障害者全体 63,403 91,939 28,003 44.2%
視覚障害者 5,081 7,109 2,283 44.9%
重度視覚障害者 2,963 4,154 1,378 46.5%
精神障害者 80,579 88,857 38,396 47.7%
知的障害者 33,410 41,803 19,958 59.7%

出典:平成27年度 ハローワークにおける障害者への職業紹介状況

厚生労働省が発表した「平成27年度の障害者の職業紹介状況」によると、身体障害者全体の就職件数28,003件のうち、視覚障害者はわずか8.2%にあたる2,283件、さらに重度の視覚障害者の就職件数は5%を下回る1,378件と、非常に低い数値になっています。
職業別就職件数を見ると、「あはき業」と言われる、あんま・鍼・灸に従事する専門職が全体の半数以上を占める一方で、オフィスでの事務職にあたる「事務的職業」は、視覚障害者全体では13.4%(307件)、重度の視覚障害者は9.8%(135件)となっております。
10年前と比べて障害者の職務領域が広がる中、伝統的な職業に雇用が偏っている現状が分かります。特に重度の視覚障害者に対しては「目が全く見えない=オフィスでの仕事はできない」という考えが根強く、雇用の妨げになっているのではないかと思われます。

重度視覚障害者の就職件数の割合

あはき業63.6%、機能訓練指導員2.1%、理学療法士1.8%、ケアマネージャー0.1%、情報処理技術者0.4%、管理的職業0.1%、事務的職業9.8%、販売0.8%、サービス5.0%、保安0.4%、農林漁業0.7%、生産工程2.7%、輸送機械運転0.3%、建設・採掘0.1%、運搬・清掃など10.7%

出典:厚生労働省が「社会福祉法人 日本盲人会連合」に提供した「公共職業安定所における視覚障害者への職業紹介状況(平成27年度)」より

視覚障害を知る

視覚障害とは視覚(視力・視野)に何らかの障害があり、日常生活や就労において不自由が生じる状態のことです。矯正視力が0.04以上0.3未満で、拡大鏡を使えば文字情報が読める状態を「弱視」、矯正視力が0.02以上0.04未満で、ぼんやりと物の形が分かる状態を「強度弱視」、矯正視力が0.02未満で、全く見えず、明暗が分かる程度の状態のことを「盲」と定義しています。 弱視と強度弱視では普通の文字を使いますが、盲になると主に点字を使用します。

視力とは別に、視野(ものの見え方)も様々あります。「見えない」と言っても、一部が見えない人や視野の中心が見えない人、眼球が揺れて見えにくい、二重に見える、ぼやけて見える、暗いところでは見えにくい・・・等、人によって異なるのです。

視野の障害

通常の見え方

例えば、視力が良くて視野が狭い人の場合は読み書きや行動に不自由さを感じます。 反対に視力が低くて視野が保たれている人は、読み書きは不自由さを感じますが歩行や行動には大きな困難はありません。
このように、視力や視野によって、見え方や不自由に感じることは変わります。加えて、これまでの就労経験等によっても出来ること、出来ないことが異なってきます。企業は、自立して就労が出来る状態を整えるために、一人ひとりがどのようなサポートが必要なのかを良く話し合い、相互に理解を深めながら支援体制を整えることが大切なのです。

重度の視覚障害でもデスクワークは可能

近年のICT技術の発展により、重度の視覚障害者でもPC入力業務などを行うことが可能になり、オフィスワークに従事できるようになっています。例えば、テキストデータは「PCトーカー」や「NVDA」といった音声読み上げソフトを使うことで把握でき、Excelを使用したデータの入力や集計、計算、調査業務も可能です。
また、電話やメールによる社外とのコミュニケーションや、語学力を生かした簡易翻訳業務も従事できます。
一方で、画像(ビジュアル)や紙媒体・書類の対応は、電子顕微鏡やルーペを使用。量が多いと負担が大きくなることもあり、周囲のサポートが必要になります。

業務内容のイメージ

  • Excelを使用したデータの入力、集計、計算
  • 調査業務(インターネットやDBを使用した情報収集)
  • 議事録や資料の作成
    ※資料はビジュアルやレイアウトのチェックをサポートしてあげてください

視覚障害者と働く上では、支援機器や適切な手段を用いて、視覚情報を音声情報や文字情報として本人が認識・把握出来るよう、「情報保障」の意識を持つことが大切です。それによって、重度の視覚障害者に対しても、デスクワークでの雇用受け入れが可能になります。

必要な配慮

最後に、視覚障害者に対する配慮のポイントをいくつか紹介します。

1.選考の際は、できることとできないことを確認しておきましょう!

例えば「PC操作ができます」という視覚障害者も、これまでの就労経験や訓練状況によりPCスキルには差があります。音声読み上げソフトを導入したノートPCをお持ちの方もいらっしゃいますので、面接以外にPC操作のデモンストレーションをしてもらうことで、PCスキルのミスマッチを防ぐだけでなく、お任せできる業務イメージを持つことができます。
また「手書き対応へ配慮すること」も、入社後の障害理解、配慮の有無をイメージする上で重要なポイントです。履歴書や筆記試験など、手書き対応が求められる選考プロセスを省くことで、視覚障害者の方々にとってのハードルは大きく下がります。

2.支援機器をチェック!

入社前に社内で使用しているメールソフト、業務システム、ソフトウェアが支援機器で使用可能かチェックするようにしましょう。使用上の問題があれば、代替機器や業務フローの検討など、対策が必要となります。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による支援機器の貸し出しサービスがあります。

3.朝の通勤ラッシュに注意!

朝夕ラッシュ時の通勤は視覚障害者にとって多くの危険があり、ストレスも大きくなります。
フレックスタイムの活用や個別の時差通勤配慮など柔軟な対応を頂けると安心して就労することが出来ます。

4.入社後に、オフィス内のレイアウトやよく使う場所、手がかりなどを知ってもらいましょう!

フロアの入口から自席までのレイアウトや移動の際の手かがりについて、詳しい説明をしながら本人と確認します。これを「環境認知」と呼びます。この時に、本人が分かりづらい点を確認したり、不自由がないかを確認することで、働きやすい環境を整えることに繋がります。初めて行く場所へ誘導する際には同様の配慮をお願いします。
エレベーターや会議室、トイレ、入退室管理の方法など、よく使う場所ははじめに案内し、使い方を説明してください。同じような部屋がたくさん並んでいる場合は、入口の近くに部屋の番号や名称の点字ラベル、識別可能なシールを貼っておくと良いでしょう。

5.白杖を使用している人の誘導は

白杖を使用している方の場合は、白杖を持つ手の反対側に立ちましょう。曲がる際や段差など、その場の状況を説明しながら誘導します。誘導の際には、誘導者の肘または肩に手をかけてもらい、半歩先を歩くことで進む方向やスピードを把握します。

6.声をかけるときは、名前を名乗る!

声で誰なのかを判別する為、声をかける時には自分の名前を名乗るようにしてください。
「○○さん、■■(自分の名前)です。」
離席する際や戻ってきた際に一声かけることで、近くの席の社員の状況も把握することが出来ます。
「■■(自分の名前)ですが、××に行って来ますね。」

7.口頭で説明するときには・・・

「これ」「それ」など指示代名詞を避け、「右」「前」など具体的に伝えましょう。 また、時計の文字盤をイメージして、「3時の場所に○○があります。」という伝え方も分かりやすいです。

業務の指示をする際は、まずは全体像が掴める様に、業務の目的や関係する部署、出来上がりのイメージについて説明をしましょう。その上で具体的な作業内容を伝えることで、担当業務の前後関係を掴みながら仕事をすることが出来ます。

そして、口頭で伝えた内容は記録に残せるように(見直せるように)、メール等の電子データでも伝えると親切です。その際に、件名は要件が分かりやすいように記載し、署名の前には「以下署名」と記載しておくと、音声読み上げソフトを使って理解する障害者にとって分かりやすくなります。