障害者の職場適応や定着のためには、配属先の社員からの理解と協力を得ることが大切です。特に、障害者とはたらくことが初めての場合には、日々のコミュニケーションや接し方、問題が起きた際の対処方法などに不安なこともあるでしょう。そこで今回は、障害者を配属する前に知っておきたい、同僚の理解を得るためのポイントを紹介します。

目次

障害者雇用への職場理解が進んでいない企業は多い

障害者雇用に取り組む上で、社内理解の促進に課題を持つ企業は少なくありません。
厚生労働省の調査によると、精神障害者の離職理由の第1位、身体障害者の第2位が「職場の雰囲気・人間関係」という結果になっています。
一方、職場理解に対する企業の取り組み状況を見ると、以下のグラフの通り「障害や障害者の状況の関する職場内の理解を深めるために研修などを実施する」ことを行っている企業は16.7%にとどまっています。この調査は少し前のものですが、2019年に厚生労働省から発表された「平成30年度障害者雇用実態調査」でも、障害のある従業員向けの配慮として「社内で障害者理解のための啓発」を行っている企業は身体障害者14.0%、精神障害者18.2%という結果になっています。職場理解の取り組みが進んでいないことが、障害者の定着に影響を与えている可能性があると言えそうです。

出典:2014年4月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「事業所における障害者雇用に関する配慮や支援の状況」
(障害者を雇用している企業(1,333 社)に対する質問への回答結果)

障害者の同僚となる社員の理解を得るための、5つのポイント

障害者の定着を図るためには、同僚や関係者の理解と協力が不可欠です。配属に際して、一緒にはたらくための情報や留意点を共有しておきましょう。

理解を得るための5つのポイントを紹介します。

  1. 雇用・配属の目的を知ってもらう
  2. 必要な配慮内容を周知する
  3. 日々のコミュニケーション方法や留意点を伝える
  4. 就業管理のためのサポートをお願いする
  5. 緊急時の対応を定めておく

1. 雇用・配属の目的を知ってもらう

はじめに、障害者を雇用することや、自分達の部署に配属する意図や目的を知ってもらうことが大切です。
障害者と一緒にはたらく社員の中には、「なぜ、うちの部門に配属されるのか」という疑問を抱く方もいるでしょう。そのため、会社として障害者を雇用する方針や意義を伝えると同時に、どのような目的をもって配属先を決めたのかを、配属時に説明しておきましょう。「どのような組織を目指していくのか」「一緒にはたらくことで社員自身にどう成長してもらいたいのか」を伝え、理解してもらうことで、雇用への理解と協力、共にはたらく意識を高めることができます。

2. 「できること・できないこと」と、必要な配慮内容を周知させる

障害者と接する同僚の不安を軽減するために、業務を行う上で「できること」と「障害特性上できないこと・困難なこと」を伝えるとともに、必要な配慮事項(合理的配慮)について、事前に障害者と企業の間で合意している内容を周知させ、理解してもらいます。併せて、雇用された障害者の持つ特性や職務能力、雇用するに至った経緯についても説明することで、実際に一緒にはたらくイメージ喚起が期待できるでしょう。

障害者に必要な配慮内容を周知する際、「障害名」まで知らせる必要があるのか、対応に迷う場面もあるかもしれません。「障害名」は、同僚に例外なく周知する必要がある項目ではありません。同僚に知らせる必要があるのは「障害名」ではなく、あくまで「何が出来て、何は苦手なのか」「どのような配慮をどう行う必要があるのか」です。業務遂行上などの理由から同僚への周知が望ましい場合には、事前に障害者本人から承諾を得た上で、同僚に伝えましょう。

3. 日々のコミュニケーション方法や留意点を伝える

障害者とはたらくことが初めての人は「障害者にどう接するべきか分からない」と悩むこともあるため、障害者への日々の接し方のポイントを伝えることが大切です。障害特性は一人ひとり異なりますが、基本的な接し方は変わりません。障害者への接し方として大切なのは、以下の3点です。

  1. 事前に共有を受けたコミュニケーション(配慮)を心がけること
  2. 遠慮はしないこと
  3. 健常者と同様に、障害者もそれぞれの個性があることを理解すること

これらのポイントを同僚に伝え、理解してもらった上で、それぞれに適したコミュニケーションの手段が何かを検討するようにしましょう。

不調のきっかけは、日々のコミュニケーションから発生する

障害者の不調のきっかけは、日々のコミュニケーションから発生するケースが多く見られます。当社がご支援した企業でも「言葉足らずや遠慮によるコミュニケーション不足で本人が疎外感を感じる」「具体的に言ってもらわないとわからないのにそれを理解してもらえない」といったことから誤解を生み、不調をきたす例を多く目にします。
例えば、対象者を限定している社内研修を案内する際「あなたは対象じゃないから研修に来なくてもいい」と伝えられたことで、障害者だから差別していると感じ不信感を持ってしまった方がいました。最初から「この研修はこの業務を担当している社員が対象です」と説明しておけば、誤解は生まれなかったでしょう。
また、障害があるから話しかけない方が良いとの考えから、日常会話だけでなく、業務上必要な情報共有などがなされず疎外感を感じてしまったという例もありました。
障害者が日々のコミュニケーションから不安を抱かないよう、「相手の特性を理解した上での声かけを同僚の方から自発的に行う」「お願いしたいことや作業方法、期限などを明確にして指示する」「指示を出す人を1人に絞り、やってもらいたい業務を具体的に分かりやすく説明する」など、同僚から障害者本人に自発的にアクションを起こすことで、互いに理解を深めていくことができます。

障害者本人も、必要な配慮を認識し、伝える努力を

障害者の中には、「自分からどのような配慮が必要なのかを説明する必要がある」ことを、きちんと理解していない人や、理解していても伝えていない、伝えられない人もいます。
就業上、どのような配慮をどの程度必要とするのかは、企業側が理解しておくと同時に、障害者本人に申し出てもらう必要があります。そのため、採用面接や雇用前に、必要な配慮についての本人の希望を聞く機会を設け、本人から伝えてもらいましょう。
また、その配慮について「実現可能な配慮かどうか」「配置部署に配慮の内容をどこまで、どのように伝えるのか」を確認することも大切です。

4. 就業管理のためのサポートをお願いする

雇用している障害者の状況を、管理者だけで把握することは難しいでしょう。そのため、日常での本人の就業状況について、特に管理者の目が届かない範囲で把握が必要な事項を挙げ、同僚に確認と報告をしてもらうよう依頼しましょう。
観察が必要な項目の例として、健康や勤怠状況の変化といった「体調面」、作業のスピードや判断力などの「仕事面」、挨拶や報連相、仕事への意欲や取り組む姿勢といった「対人面」が挙げられます。同僚にはこうした点で、何か変化があった際は報告してもらうよう依頼します。
障害者本人の特性から、業務遂行で一般社員とは異なる動きが想定される場合には、その旨をあらかじめ説明し、「どういった対応をしてもらいたいか」または「何も対応する必要がないか」を伝えておきます。

サポートをお願いする際は、同僚で対応すること・してほしいことと、する必要がないことを決めておくことが大切です。具体的には、就業規則や業務上ルール化されている相談は同僚で対応し、ルール化されていない事項は同僚から管理者へ対応を依頼する。障害特性や生活に関わる相談の対応も管理者が行うように定めておくと良いでしょう。
また、指導や管理者への連絡を行う社員の役割分担を定めておくことも必要です。例えば実務指導は先輩社員が行い、就業態度に関する指導は管理者が行う。勤怠は同部署の社員に連絡し、有給休暇の取得や通院のための遅刻早退などは管理者に連絡する、といった形で定めておきます。

5. 緊急時の対応を定め、周知する

不測の事態が発生した際の対応方法についても、事前に定めて説明しておくことが重要です。災害時に、「誰が」「どのように」障害者を誘導するのか、役割分担やフローを決めておきましょう。例えば、車いすを使う障害者を非常口に誘導するケースでは、「誰がストレッチャーを操作するのか」などを決めておきます。
また障害特性によっては、災害が引き金となって不調が現れる可能性があります。そうした事態に備えるため、同僚・本人・管理者の3者で、不調が現れた場合の「管理者への報告」や「本人への対応事項」を予め検討し、同意を得ておきましょう。

まとめ:障害者と一緒にはたらく同僚は、定着に向けたキーマン

雇用した障害者が職場に定着し、活躍するためには、一緒にはたらく同僚の理解が不可欠です。理解を得るために、雇用や配属の目的や障害特性、業務遂行上できることとできないこと、必要な配慮事項を周知させるとともに、協力をお願いしたい就業上のサポート内容を説明しておきます。
同僚にサポートをお願いする際は、対応してほしいこと・する必要がないことの範囲を定めておくこと、誰が何についての指導・確認を行うかの役割や、どういった状況で誰にどのような情報を共有するかを明確にしましょう。
大切なことは、障害があることや障害名だけに捉われず、障害者自身の個性や特徴、能力を知り、必要に応じて協力する体制をつくることです。
企業と配属部署の責任者、ともにはたらく同僚、三者が連携を行うことによって、障害者も同僚も共にはたらきやすい環境を作ることができ、障害者の定着につながるでしょう。