就労移行支援事業所と連携する 採用・定着のためのポイント

就労移行支援事業は、一般企業での就労を目指す障害者に職業訓練や就職支援を行う福祉サービスで、全国で3,000カ所以上あると言われています。利用する障害者一人ひとりの支援計画を基に職業訓練や就職支援が行われます。
企業は就労移行支援事業所と連携することで、自社の採用要件に合った人材を採用し、雇用後の定着に繋げることができるでしょう。今回の記事では、就労移行支援事業と連携するメリット採用や定着に繋げるための連携ポイントをまとめました。

就労移行支援事業とは

  • 就労移行支援事業とは?
  • どのような事業所があるの?
  • 支援内容は?
  • 就労定着支援とは?
  • 就労継続支援事業との違いは?

就労移行支援事業とは?

就労移行支援事業とは「障害者総合支援法」に基づく就労支援サービスの一つで、一般企業へ就労を目指す障害者が必要な知識やスキルを身に付けられるようサポートを行います。
2017年に厚生労働省が発表した「就労移行支援に係る報酬について≪論点等≫」によると、就労移行支援事業所は2017年の時点で全国3,398カ所、利用者は33,493人となっています。障害者種別で見ると、身体障害者と知的障害者の利用割合は減少傾向にある一方で、精神障害者の利用割合は、全利用者の5割以上を占め、増加傾向にあります。

就労移行支援事業所を利用できる対象と対象年齢、利用期間は下記の通りです。

対象となる方 精神障害や発達障害・知的障害・身体障害などの障害をお持ちの方や、難病のある方
対象年齢 18歳以上から65歳未満
利用期間 最長2年間のサポートを受けることが可能
(自治体で行われる個別審査で「今後もサポートが必要である」と認められた場合には、最大1年間延長される場合もある)

利用者が負担する費用は、所得に応じて次の4区分の負担上限月額が設定されています。ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じませんが、事業所によっては食費などの実費が必要になることもあります。

1.どのような事業所があるの?

全国各地に3,000カ所以上ある就労移行支援事業所ですが、各事業所によって多様な個性があります。

  • 全国の主要な地域で展開している
  • 特定の地域のみで展開している
  • 特定の職種・職域に特化している(PCスキル、IT、Webデザインなど)
  • 汎用的な訓練や講座を提供している(ビジネスマナー、挨拶の仕方、PCの操作方法、など)
  • 障害に特化せず、あらゆる障害者を受け入れている
  • 障害に特化している(うつ・精神疾患向け / 発達障害者向け、など)

それ以外にも、交通の便の良さやカリキュラムの充実、就職活動への手厚いサポート、昼食の提供といった福利厚生の充実さなど、様々な特色・強みを持った事業所があります。

2. 支援内容は

就業移行支援事業所は、企業ではたらきたい障害者を支援し、障害者を雇用したい企業へ紹介するという、いわば「橋渡し」役のような役割を担っています。具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか。

事業所を利用する障害者に対しては、利用開始時に作成した個別支援計画に沿って、就業に必要な知識や能力を身につけるための訓練と就職支援を行います。また就労定着支援を提供している事業所は、就職後の職場定着のための支援を行っています。

企業に対しては、インターンや企業説明会など、利用者への企業理解・マッチング機会の提供や、雇用後の定着支援(障害者への定期面談実施、問題解決のために配慮方法や環境整備に関する助言・サポート)を行っています。

  • 個別支援計画の作成
  • 就業のための訓練
    (障害理解、業務実習、ビジネスマナー講習など)
  • 就職支援
    (職種・企業研究、面接訓練、履歴書や職務経歴書の作成など)
  • 採用後の就労定着支援
  • 企業説明会や企業実習の実施機会の提供
  • 利用者に関する情報提供や面接同席
  • 雇用後の就労定着支援

3. 就労定着支援とは

比較的新しい障害福祉サービスに「就労定着支援」があります。平成30年から施行された改正障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、はたらく障害者に対し、労働環境の変化によって生じる生活面・就労面の課題に対応できるように支援を行う事業です。

就労移行支援や就労継続支援A型・B型、生活介護、自立訓練サービスを経て就労をした方が対象となり、利用期間は最大3年間となっています。支援内容は、就労後に発生した業務面や生活面での困りごとや課題に対して、定期的に面談を行い、問題解決のためのアドバイスや、各関連機関との連携を図ってはたらきやすい環境を整える事としています。

4. 就労継続支援事業との違い

障害者総合支援法に定められたもう一つの福祉サービスに「就労継続支援」があります。違いを下記の表にまとめました。

  就労移行支援事業 就労継続支援事業
A型 B型
目的 一般企業に就職することを目的に、必要なスキルを身に着ける 雇用契約を結び、はたらきながら一般企業への就職を目指して必要な訓練をする 通所して工賃をもらいながら、A型事業所や一般企業への就職を目指し訓練する
対象者 65歳未満 特別支援学校などを卒業後、就職に結びつかなかった人。65歳未満 年齢制限なし
利用期間 最長2年の利用が可能
(最大1年延長可)
定めなし 定めなし
工賃
(賃金)
なし あり あり

いずれも障害者の就労をサポートする支援サービスではありますが、移行支援と継続支援はそもそもの目的が大きく異なります。 就労継続支援には、就労継続支援A型(雇用型)と就労継続支援B型(非雇用型)の2つがあります。A型とB型の違いは「雇用契約を結ぶか結ばないか」という点です。

就労移行支援事業所と連携するメリットは

1. 自身の障害を受け入れ、理解している方が多い

就労移行支援事務所に通所している障害者は、事業所での訓練によって自身の障害特性や対処方法を理解し、受け入れができている人が多いと言えます。どのような障害特性があるのかを障害者側と企業側の双方で共通認識できることは、雇用・定着のための第一歩となるでしょう。

2. 安定就労要素が整った方が多い

就労移行支援事業所での訓練などを経て、安定して仕事に取り組めるまでに心身の状態が整っている方が多くいます。「通院・服薬など自己管理ができる」「必要なサポートを求めることができる」「はたらくための前向きな意志を持っている」などは、安定就労のために欠かせない要素です。また、就労移行支援事業所に通所することができている方は、会社への通勤や出勤も問題なく行える可能性が高い方と判断することもできます。
就労環境に近い状態で訓練を行っている事業所を利用している障害者は、オフィス環境にも比較的馴染みやすいでしょう。業務を行う上で基本となる「報連相ができる」「不安に対して発信ができる」など、必要なコミュニケーションスキルを身に着けた状態で雇用することができます。
また、特定の職業領域を対象としている事業所は、その業務に必要な知識や技能を身に着けているため、雇用後もすぐに活躍できる可能性が高いでしょう。

3. 採用・安定就業のための必要な施策を考えてくれる

企業は就労移行支援事業所と連携することで、自社の人材要件や業務内容と合致する障害者はどのような人なのかを相談しながら検討することができます。
選考時には、応募者の特性や性格などの情報を提供してくれるほか、面接に同席してもらうことができます。障害者採用をあまりしていない、障害者の採用活動に慣れていない企業の担当者にとっては、その人を多角的に見るための力になってくれます。
また就労定着支援を行っている事業所は、障害者が企業に就職した後も、生活面においての必要な支援を続けてくれます。企業と障害者の仲介役として、職場の面談に同席する、企業や関連機関との連絡調整を行うなど、職場に定着するようフォローや助言を行ってくれます。

採用後の定着のために~就労移行支援事業所と上手に連携するポイントは

  1. 自社の採用要件と合致する事業所か?
  2. どのような支援員がいるか?
  3. 採用要件や必要な支援を伝えているか?
  4. 通所率を参考に

自社の採用要件に合う障害者を雇用・定着させるためにも、連携する就労移行支援事業所をしっかりと選び、活用することが大切です。当社パーソルチャレンジでも、障害者を雇用し定着を図るにあたり、就労移行支援事業所と連携することは欠かせない取り組みの一つです。
最後に、就労移行支援事業所との連携において押さえておきたい4つのポイントを、当社での取り組みを踏まえてご紹介します。

1. 自社の採用要件と合致する支援をしている事業所かを見極める

就労移行支援事業所はそれぞれの特色があるため、取り扱っている職域や訓練メニューが異なります。そのため、対象としている職域や業務・障害種別・訓練の内容が、自社の採用要件と合致するのかを見極めることが重要です。
例えば、チームで進める業務が多い企業の場合は、コミュニケーションスキルやグループワークに関する訓練を重視し、多く取り入れている事業所と連携すると良いでしょう。またPCを使った作業が多い企業では、PCソフトの使い方だけでなく、PCを使った業務訓練やWebに関する知識の習得に力を入れている事業所を選ぶと良いでしょう。
特定の障害種別や職種・業務を担える障害者の採用に力を入れたい場合は、それらに特化した事業所を探します。
「疑似就労」(オフィスに近い環境で、実際の企業で行われている作業を訓練として受けること)を受けている障害者は、雇用後もオフィス環境に慣れるスピードが速い傾向があります。雇用後の職場適応・初期定着のためには、報告・連絡・相談がしっかりできること、不安や慣れないことがあった際に自分から発信できることが大切ですが、疑似就労を受け、コミュニケーションに関する訓練をしっかり行っている事業所やその利用者は、オフィスの雰囲気だけでなく、そうした“ホウレンソウ”や自己発信ができることを含めて、適応できる可能性が高いでしょう。

2. どのような支援員がいるかを見る

就労移行支援事業所には様々な支援員が在籍しており、当然ながら、支援員によって就労に対する考え方や支援の仕方に違いがあります。障害者の立場からの支援や保護的な観点だけでなく、支援や就職への熱意があること、本人と適度な距離感を保って客観的な指摘ができること、そして、企業視点を持っていることが大切です。
ビジネスマナー、同僚や上長とのコミュニケーション、業務の進め方、報告・連絡・相談の仕方、人事評価など、“企業のオフィス環境ではたらく”ということや、その中で発生する可能性のある不安や課題は何かを理解している支援員がいると相談がしやすいかもしれません。どのような考え方で支援を行っているか、支援員、できれば事業所の責任者と話す機会を作ると良いでしょう。

3. 自社の採用要件と求める支援を明確に伝える

就労移行支援事業所と長期的に良好な関係を築いていくためには、自社の方針や人材要件を伝えることが大切です。どのようオフィス環境で、どのような仕事があるため、このような人材を求めているということを、なるべく明確に、正しく伝えるようにします。
利用者に「この会社に応募したい!」と思ってもらえるよう、説明会や企業実習を積極的に行うことも大切です。支援員は利用者の特性や能力を鑑みて、その人に合った職種や企業を選び、本人に提案してくれるので、自社のことをよく伝え、理解してもらう機会を活用しましょう。
また、雇用後も安定して就業できるよう、どこまでの支援を望んでいるか、就労移行支援事業所ではどこまでのサポートができるのかを事前にすり合わせておくことが重要となります。例えば企業が立ち入りにくいプライベートに関わる不安や悩みが現れた際は、本人とコミュニケーションを取り対処してもらう、などの支援を依頼します。

4. 採用の際には「通所率」を確認する

採用を検討してもよいという障害者に対しては、選考の際に、就労移行支援事業所で訓練を受けていた時の「通所率」を確認しておきましょう。通所率が高ければ採用後も休まず通勤できる可能性が高いと考えられるため、就労安定要素があるかを見極めるポイントにもなります。必要に応じて支援員に情報を開示してもらいましょう。