障害者雇用のメリット~デメリットや課題への解決策とは~

障害のある方の雇用を進めることは、企業価値の向上や多様性のある組織作りなど、多くのメリットをもたらすものでもあります。また、雇用全体の方針を見直すきっかけにもなり、業務の効率化や生産性の向上に繋がるなど、様々な効果をもたらします。

その一方で、「障害者雇用は法的義務だから行う」と考えている企業が多いのも現状です。障害者を初めて雇用する企業では、様々な懸念や不安を「デメリット」として受け取る場合もあるでしょう。そこで今回は、障害者雇用におけるメリットとデメリット、雇用を進めるにあたっての問題点やメリットに変えるためのポイントについて紹介します。

障害者雇用のメリットとは

企業にとって障害者を雇用することは、法的義務を果たすための大変重要な取り組み事項ではありますが、それ以外にも多くのメリットを生む可能性を秘めています。障害者雇用によって得られるメリットを次の4つにまとめてみました。

  1. 業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる
  2. 生産性が向上し、戦力として活躍する
  3. 社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出につながる
  4. 多様性のある企業文化、組織作りができる

1.業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる

障害のある方を雇用すると場合、個々の障害の特性や職務能力に合わせて働ける業務を創出する必要があります。この「業務の見直しと切り出し・創出」は、社内の業務全体の最適化、効率化を見直すチャンスにもなるのです。
例えば下記のような業務はどの会社でも行われていますが、障害のある方が取り組む業務としても比較的切り出しやすいと言われています。

  • インターネットや文献資料で調査する
  • 資料やデータをスキャン・入力する
  • データをとりまとめて更新する
  • リストを抽出・作成する
  • 資料を送付する
  • Webサイトに情報を掲載・更新する

業務を創出するためには、日常の業務の中で何気なく行っている作業を内容や行程、進め方などの視点で改めて見直す必要があります。その過程が、障害者のためだけでなく、部署や会社全体の業務の最適化、効率化を図るきっかけとなるのです。

2.生産性が向上し、戦力として活躍する

障害の特性をしっかりと理解し、適切な職務配置を行うことで、障害者が定着して働くことができます。さらに適切な人事評価制度やマネジメントによって生産性が向上し、戦力として活躍できるようになります。

近年のIoTやツールの進化によって、障害者が担うことができる仕事の幅が拡大し、円滑なコミュニケーションも可能になってきているため、マネジメントでの負荷も軽減されつつあります。また、テレワーク雇用など、働く場所や勤務形態の選択肢も徐々に増えているので、働きやすい環境の中でより生産性を向上させることも可能です。「障害特性があっても働ける」だけでなく「障害特性によって貢献する」ことができるようになりつつあります。このような社会的な変化も後押しとなって、障害者の活躍機会はさらに高まっていくでしょう。

3.社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出につながる

近年、企業経営の観点においては「ダイバーシティ&インクルージョン」や「働き方改革」という概念が注目されています。社会課題解決は、「社会の公器」である企業の果たすべき役割として求められるようになりました。

企業が障害者を雇用するということは、障害者の方が活躍できる場を提供するという意味を持つため、大きな社会貢献につながります。障害者雇用率制度とは、障害者が社会保障費を受給する立場から、みずから労働して対価を得て自立し、社会で活躍できるようにするため設けられた制度です。障害者雇用を積極的に取り組むことによって、「社会的責任を果たしている企業」として、企業価値の向上につなげる可能性を秘めています。

アメリカでは、DEI(Disability Equality Index=障害者平等指数。障害者雇用の取り組みを0点から100点までで算出・評価するもの)の優良企業リストが毎年発表されており、障害者雇用への取り組みが企業価値を図る指標の一つとして認識されるようになっています。今後は日本でも、障害者雇用が価値として評価されるようになるかもしれません。

4.多様性のある企業文化、組織作りができる

ダイバーシティの重要性は社会的にも広がっていますが、企業の雇用においても多様化が一層進むであろうと予想されます。ダイバーシティとは性別や人種の違い、障害の有無を問わず、多様な人材を活用しようという考えです。障害者と共に働くことで「違い」に気付くことができ、お互いの理解を深め配慮しようという助け合いの空気を育むことができるでしょう。また、新しい発想や視点を発見することもできます。

障害の特性や職務能力などから、障害者の中にも「個性」があるという事を知ることができるはずです。障害者雇用は企業内に真の多様性を生み、より強固な組織作りを可能としてくれます。

障害者雇用のデメリットとは何か

障害者雇用は企業活動に大きなメリットを生む取り組みですが、一方で雇用がうまく進まないという課題も多く耳にします。

  • 障害者を雇用すると、雇用や管理コストがかかる・・・
  • 障害者のために、業務創出や就業環境、人事制度を整備する作業が発生する・・・
  • 現場のメンバーによるサポートが必要になり、生産性が下がる・・・
  • 障害者雇用のメリットなんてない。デメリットだけ・・・

特に、障害者と共に働いたことがない配属先の社員が、知識不足によって障害者を受け入れることを不安に感じ、そこから問題や課題が生じているケースが多く見られます。そのようにして生まれる「障害者雇用のデメリット」が、雇用を促進する足かせとなっているのです。

1.企業が考える、障害者雇用の問題点や課題(調査結果から)

「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、障害者を雇用する際の課題としては、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者ともに、「会社内に適当な仕事があるか」が最も多くなっています。障害のある方がどのような仕事ができるのかを知らないために生まれる課題であると分析できます。

<雇用するに当たっての課題(複数回答:4つまで)>

順位 項目 身体障害者 知的障害者 精神障害者 発達障害
1

会社内に適当な仕事があるか

71.3% 74.4% 70.2% 75.3%
2

障害者を雇用するイメージやノウハウがない

45.6% 51.0% 49.7% 52.9%
3

職場の安全面の配慮が適切にできるか

40.9% 31.9% 29.9% 31.5%
4

採用時に適性、能力を十分把握できるか

32.3% 38.8% 37.2% 39.6%
5

従業員が障害特性について理解することができるか

23.3% 35.9% 37.4% 37.8%

出典:厚生労働省 「平成30年度障害者雇用実態調査結果」 障害別 雇用するにあたっての課題
※調査対象:6,181事業所

また、「平成30年版厚生労働白書」によると、障害や病気を有する者が職場にいる場合の影響として「仕事の進め方について職場で見直すきっかけになった」「各人が自分のライフスタイルや働き方を見直すきっかけとなった」と答える一方、「仕事の負担が重くなった」「職場で社員の間に不公平感が生まれた」といったマイナスの意見も多く集まりました。よい影響をうけつつも、障害のある方と共に働くという点で真の理解を深めることは容易ではないということがうかがえます。

<障害や病気を有する者が職場にいる場合の職場への影響>

障害や病気を有する者が職場にいる場合の職場への影響のグラフ画像

出典:厚生労働省 「平成30年版厚生労働白書」

他にも、パーソルチャレンジが2018年5月に実施した「障害者雇用に対する課題」についてのアンケート調査では、障害者の雇用計画、準備段階では「(配属現場における)社内理解の促進」「業務切り出し・新規創出」に課題を感じ、障害者の採用・配属後には「受け入れ組織の管理者・指導者育成」「受け入れ組織の負担の増加」に課題を感じているということがわかっています。雇用だけでなく、その後の定着においても課題を抱えているということを読み取ることができるでしょう。

1.採用・採用計画(複数回答可)

1.採用・採用計画(複数回答可) 1.採用・採用計画(複数回答可)

2.人材の定着に関して(複数回答可)

2.人材の定着に関して(複数回答可) 2.人材の定着に関して(複数回答可)

出典:パーソルチャレンジ 「障害者雇用に対する課題」についてのアンケート調査
※2018年5月実施「日本の人事部 HRカンファレンス2018 -春- [東京][大阪]」当社講演セミナーの参加者116名に対する調査(東京55名 / 大阪61名)

「情報と理解不足」が、障害者雇用のデメリットを生む

上記の調査結果を踏まえ、障害者雇用における問題点は次のようにまとめられます。

採用を進める人事側

  • 社内の理解が得られない
  • これから雇用をどのように進め、広げていったらいいのか分からない
  • 必要な人材を雇用できるのか
  • 障害者が従事する業務としてどのようなものがあるか、業務を切り出せるのか
  • 雇用後に安定就業・定着できるのか

配属先の管理者

  • 何か問題が生じたらどう対応すべきなのか、社内のどこに相談すればいいのか、会社は何をやってくれるのか
  • 障害についての知識が不足している
  • どのような配慮が必要なのかがわからないか
  • 障害者に任せられる業務がない
  • どのようにコミュニケーションをとり、管理していけるのかがわからない

多くの企業で「雇用を進めたいが社内の理解が得られない」という課題を抱えています。特に、これから本格的に障害者雇用に取り組む企業の場合は、知識やノウハウが多くないこともあり、「雇用の方針や進め方に対する社内理解をどのように伝え、理解してもらえば良いのか分からない」という声も耳にします。

一方、雇用現場側では「どのような特性があるか?」「どのような業務がマッチするのか?」「どのようにマネジメントするべきなのか?」といった、「障害者と働く」ための知識や情報が足りていない様子が見られます。

つまり、知識やノウハウなどの情報不足からくる不安と、その結果として生じる「社内理解」への障壁が、雇用を進める上で大きな問題となっていると言えます。

障害者雇用のデメリットをメリットに変える4つのポイント

障害者を雇用することは法的義務を果たすだけではなく、企業にとって多くのメリットを生みます。雇用を進める際に生じる問題やデメリットをメリットに変換し、社内に浸透させることで、社員の理解を得ることができるでしょう。デメリットとして受け取られやすい問題をメリットに変える4つのポイントをご紹介します。

1.会社の方針を明確にして、社内理解を深める

社内で障害者雇用について説明をする際、単に「障害者の雇用は義務だから」「●●障害の特性は△△で…」といった説明するのだけではなく、企業の社会的責任を果たすための義務であることを説明した上で、「なぜ雇用するのか」「どのような方針・計画をもって雇用を進めるのか」を丁寧に説明しましょう。

重要なのは、障害者の雇用方針が、企業理念や雇用全体の方針と一致していることです。障害者雇用に取り組むタイミングで、企業理念や社会への提供価値、雇用全体方針を改めて見直し、その先に障害者雇用が位置付けられているかを確認しましょう。

2.現場と協力して障害のある社員のサポート体制を作る

現場が抱える不安を解消するためにも、人事を中心に会社全体でサポート体制を作ることが大切です。現場からあがってくる不安や疑問にしっかり答えられるようにしましょう。サポートの内容は、現場責任者との情報共有、配属の決定方法、面談の時期と回数、トラブルが発生した場合の相談窓口の設定、業務目標の設定や評価などが考えられます。

その上で、下記のような詳細な内容まで決めておけると、現場担当は安心してマネジメントをすることができるでしょう。

  • 採用時に、障害者の特性や職務能力、必要な配慮事項、管理・コミュニケーション時のポイントなどの情報を配属現場の担当者に漏れなく伝え、理解させる
  • 入社後、配属前研修を人事部門主体で行い、特性や職務能力などを見極め、現場管理者に共有する
  • 面談は1~3ヵ月に1度、人事部で定期面談を行い、職場での人間関係や体調面についてヒアリングした上で、現場の管理者にフィードバックする
  • 人事部内に相談窓口を設け、健康面でのトラブルが発生した場合は、支援機関と連携の上で人事部門が主に対応する
  • 初めて雇用に取り組む場合は、雇用コストを現場ではなく人事部門が一時的に負担する

3.本人と話し合い、障害特性や能力、配慮事項をきちんと把握して現場と共有する

障害のある社員に合理的配慮として必要なサポートを行うためには、採用時や現場に配属される前に本人と話し合い、その障害特性や能力、どのような点に配慮してほしいのかを把握しておく必要があり、その情報は本人の了解を取った上で現場の管理者やスタッフとも共有します。

初めて障害者を受け入れる現場や管理者に対しては、障害者受け入れに関する研修会を開くといいでしょう。研修会では、障害特性についての基本的知識、日々のコミュニケーションやマネジメント、健康面でトラブルがあったときの対応方法、人事側のサポート体制などについて伝えておきます。また、配属部署以外の社員も対象に、業務の取り組みの共有や、障害者との相互理解を深める機会を定期的に設ければ、社内理解の浸透に効果的です。

4.助成金を活用し、雇用を促進する

「障害者雇用促進法」に基づき、企業は雇用を推進するにあたり、国から様々な助成金を受け取ることができます。代表的なものをいくつか紹介します。

制度名称 対象 目的
特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)
身体障害者・知的障害者・精神障害者 障害者雇用の経験のない中小企業が、障害者雇用の促進を図る
特定求職者雇用開発助成金
(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
障害者手帳を持たない難治性疾患患者・発達障害者 発達障害者や難治性疾患患者の雇用を促進し、職業生活上の課題を把握する
障害者雇用安定助成金
(障害者職場定着支援コース)
障害に応じた雇用管理や雇用形態の見直し、柔軟な働き方の工夫などを行っている事業者 障害者の雇用を促進するとともに、職場定着を図る

上記の他にもさまざまな助成金制度があります。

助成金については下記記事をご覧ください。

まとめ:メリットを生むために、まずは社内理解の促進から

障害者雇用の推進は、障害者と一緒に働くことへの理解を深めることから始まります。理解を深めるためには、障害の特性や配慮の仕方などについて正しい知識を持ち、障害者と共に働くことで企業が得るメリットについて浸透させることが重要です。

雇用後は、定着に向けて人事と現場が情報共有や連携を密に行っていきます。社内の理解を深められているか、受け入れ態勢を整えているか否かで、雇用拡大や、採用した社員の定着に大きな違いが出ます。現場に任せるだけでなく、人事側でサポート体制を作り、しっかりと支えるようにしましょう。

企業が障害者を雇用する上では、様々な問題点や課題も生じます。それらのデメリットをメリットに変えるポイントなども参考にしながら、まずは自社の雇用方針を明確にし、現場への支援体制をつくるところから始めてみてください。