障害者の雇用管理ポイント~雇用後のトラブルや離職を防ぎ、定着するために~

雇用した障害者の職場適応と定着を図るためには、障害特性や必要な配慮を十分に把握し、就業への不安や問題が起きた際はすぐに、配属現場や支援機関と連携しながら対応します。特に採用・部署配属されて間もない時期は、これらの対応を徹底することが大切です。今回は、雇用側として企業が行うべきポイントを、当社がご支援した事例を交えて詳しく紹介します。

障害のある社員にとっての「職場の不安」を把握する

はたらく上での不安は、障害の有無に関わらず誰もが抱えるものです。障害者はそれに加え、はたらく上での制約があるため、障害のない社員に比べ不安を抱えやすいと言えるでしょう。障害の種類や特性によって違いはありますが、職場で障害者が抱える“不安の種”としては次のようなものがあります。

職場で抱える”不安の種”の例

<業務>

  • 指示の理解が追い付かない…
  • 自己判断が多く負担に感じる…
  • ミスが改善できない…

<コミュニケーション>

  • 相談相手は誰か…
  • 質問が多いと思われているかも…
  • 同僚の言動が気になる…

<就業環境>

  • 指通勤時の混雑が恐怖…
  • 席の位置が落ち着かない…
  • 休憩の過ごし方が分からない…

このような不安が解消されないままでいると、不安は大きくなり、食欲不振や睡眠障害、業務ミス、パニック、勤怠の不安定など、心身の様々な不調につながりやすくなります。

雇用管理で行うべき配慮

障害者が職場に適応し、定着している状態とは「障害者本人が仕事に対するやりがいを感じ、活躍しているという感触」と「企業が、障害者に対して期待しているはたらき方や成果、それに対する評価」が釣り合っている状態です。
そのために、雇用管理面で行うべき配慮としては以下のようなものがあります。

■配属先での人間関係

  • 障害特性や必要な配慮などの把握・理解
  • チーム内のメンバーや上長との話し合いや、業務を通じたコミュニケーション

■職場環境

  • 障害特性や配慮に沿った座席の配置や設備の設置

■健康管理

  • 通院や服薬、休憩や休暇、出勤時間や早退などの配慮

■評価、処遇

  • 人事制度に基づき、職務や目標設定、それに対する評価や処遇

■教育・訓練

  • 人材育成の視点から、教育や研修機会の提供

雇用管理上、押さえておきたい3つのポイント

雇用管理を行うにあたって、押さえておくべきポイントを3つ、紹介します。特に雇用初期(採用し、部署配属して間もない期間)には、この3点を実施することが、その後の定着・活躍にとって大変重要になります。

  1. 日々の状態、調子の変化を観察する
  2. 面談で状態を把握する
  3. 不安に対処する

1. 日々の状態、調子の変化を観察する

障害者が安定してはたらけるよう、雇用管理者や担当者は就業状況をよく見て、コミュニケーションを積極的に取るよう心がけましょう。下記のような点を意識しながら日々のコミュニケーションをとるようにします。

■主な観察項目

  • 睡眠、体力
  • 勤怠、生活リズム
  • 通院、服薬状況
  • 仕事への意欲
  • 仕事に対する能動性、主体性
  • 作業判断力、スピード
  • 作業正確性、ミスの頻度
  • 素直さ、正直さ
  • 向上意欲
  • 他者への貢献意欲
  • 挨拶、返事、報告・連絡・相談の有無や頻度

2. 面談で状態を把握する

障害者の中には、自ら相談を申し出ることや、不安に感じていることを言葉にして伝えることが苦手な人もいます。障害のある社員の状態や必要な配慮を確認し、対策を行うために、雇用雇用管理者による定期的な面談が必要です。面談は主に次の2種類があります。

定期面談
  • 毎月1回30分など、あらかじめ面談日を決めて通知
  • 障害のある社員が伝えたいこと、相談したいことを準備してきてもらえる
必要に応じた面談
  • 不定期で実施
  • 必要に応じて面談の時間を設け、障害者の状態を随時把握できる

面談の場では、先に上げた主な留意点、本人に業務状況や就業環境、体調についてヒアリングし、不安に感じていることを確認し、対処をしましょう。仕事上の指導や改善案を提示する場合には「定期面談」が、障害者本人から面談の申し出があった場合には「必要に応じた面談」が適しています。

面談で聞くべきこと、確認ポイントとは?

面談で気をつけるポイントとして、「障害者が答えやすい質問になっているかどうか」があります。「最近どうですか?」などのオープンクエスチョンを用いず、聞きたい内容を具体的に質問するようにしましょう。

また、「面談で本当のことを話すと辞めさせられるのではないか」と心配し、状況把握する上で大切な情報を話してくれない場合もあります。なぜこのようなことを聞くのか、理由をしっかりと伝え、決して不利な状況にはならないということを理解してもらう必要があります。

話を聞く時はできるだけ笑顔で、相手の話を否定せず耳を傾けることが大切です。前回の面談からどう変化しているか、経過を観察することも忘れずに行いましょう。

3. 不安に対処する

障害者が抱いている不安を対処する際には、まず「原因を特定する」必要があります。障害者の訴えや現状だけでなく、背景や真の原因を客観的に考えてみます。その上で、必要な配慮は提供されているか、体調や障害特性上、配慮すべき内容を見直す必要はないか、メンバーとのコミュニケーションや人間関係に問題はないか、業務の難易度は適正か、などを見ていきます。
一つのポイントとしては、原因が「就業面」に起因する問題なのか、それ以外の「プライベートや家庭」「個人的な悩み」「健康・医療」に起因する問題なのかを、切り分けて考えることが重要です。「プライベートや家庭」「個人的な悩み」「健康・医療」に関する問題は、企業が踏み込んで対処することが難しい場合が多いため、第三者の支援機関と連携して対処します。

※支援機関との連携については以下の記事を参照してください。

ご参考:当社の事例…精神障害のある社員のメンタル状態を「見える化」する

当社パーソルチャレンジでは、300名以上の障害のある社員がはたらいていますが、そのうち半数以上が精神障害のある社員です。精神障害は「人より不安が大きくなる」という特性があるため、当社では「メンタルの状態の可視化」と「メンタルの状態の悪化を未然に防ぐための対応」に力を入れています。

「メンタルの状態の可視化」では、メンタルの状態を17項目4段階で評価する「メンタルレベルマトリクス」を開発し、活用しています。これにより、有資格者や専門家ではない雇用管理者でも、障害のある社員一人ひとりのメンタル面での健康状態を、管理・把握できるようになりました。

「メンタルの状態の悪化を未然に防ぐための対応」としては、1対1での個別面談を実施しています。メンタルレベルマトリクスの結果に基づき、精神障害者のメンタル状態を面談の場でも確認し、悪化しないよう努めています。

※メンタルレベルマトリクスをはじめ、当社の雇用管理の取り組みについては会員限定ページにて詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

雇用管理が至らず早期離職となった例 (当社キャリアアドバイザーの支援事例から)

雇用管理が十分でなく、必要な配慮や対策が取れておらず、せっかく採用し配属されても離職に至ってしまうことがあります。ここでは当社のキャリアアドバイザーが、これまでご支援した中で、ご入社されたものの離職に至ってしまった事例をいくつか紹介します。

事例1. 現場との乖離で「据え置き」状態に

下肢機能障害がある30代の男性は、前職でのシステム開発の経験を活かそうと、大手IT系企業の開発職に応募しました。前職とは開発分野や環境が少し異なることに不安を感じてはいましたが、面接時に「わからないことはメンバーや上長が教えますので、未経験でも大丈夫です」との返答があったことで、入社を決めました。

ところが、入社して配属された後は、自分の席は与えられたものの担当する業務の説明や作業の具体的な指示がなかったため、業務の発生経路や職務面の相談先も全く分からず、困惑したそうです。教育・研修制度にも応募しましたが「今は人がいっぱいなので、空きが出るまで待っていてください」と断られ、その後連絡もありませんでした。社内で相談できる先もなく、当社のキャリアアドバイザーに相談をいただきました。

相談を受け、当社から企業側へ「周囲とコミュニケーションをとりながら進めたい、業務指示や相談できる方を決めてほしい」という要望を伝えましたが、企業側からの返答は「配属先はコミュニケーションが苦手な人は多いけれど、あまり気にしないでください」というものでした。状況は改善されず、やがて体調面に不調をきたしてしまいます。

企業側からの配慮として「フォローができるよう、雇用管理者の隣に席替えをする」と提案頂きましたが、雇用管理者が在席していることがほとんど無かったため、フォローを受ける機会はありませんでした。
結果として、入社半年で離職することとなりました。

【解説】

このケースは、障害のある社員を雇用したものの、面接をした人事部と現場配属先との間で、障害特性や必要な配慮、業務指示や管理、何かあった際の相談体制などのすり合わせが十分でなく、就業状況や体調の把握が全くなされなかったことが原因と言えるでしょう。

事例2. 必要な配慮がなくなり、改善できず離職へ

聴覚障害のある男性は、採用面接時、音による指示が受けられないため、「会議や指示を文字ベースで行ってほしい」といった旨を伝えました。企業側からは「障害には十分に配慮します」との返答もあり、入社を決めました。

入社当初は行われていた会議時のノートテイクや議事録の共有も、時が進むにつれてだんだんとなくなり、口頭のみで会議が進んでしまう状況に変化していったようです。会議内容の共有がないため、「今、会議がどうなっているのか」や、決議内容のキャッチアップが追いつかず、疎外感を抱くようになりました。業務においても認識の齟齬が生まれるようになり、結果として退職されることになりました。

【解説】

このケースは、障害特性への理解や必要な配慮はあったものの、配慮が継続されなくなったこと、問題の把握や改善策が取られなかったことが原因と考えられます。聴覚障害は耳から情報が入ってこない分、微妙なニュアンスがわかりづらいことがあります。また、聴覚障害のある方の中には、何度も質問して相手から嫌がられた経験から、「分かったふり」をしてしまう方もいらっしゃいます。そのような特性や事情を理解し、配慮が適切に行われているか、業務上不安なことや問題がないかを、面談等を通じて確認し、適宜対応しましょう。

事例3. 雇用実績はあっても、新たな配属先で受け入れる際は要注意

精神障害(うつ病)のある30代前半の女性は、食品卸の受注業務を行う部署に配属されました。配属先に対しては自分の障害を開示し、責任感が強く「自分ゴト化」しすぎてしまうこと、パニック発作が起こること、動悸が激しくなることといった特性があることを伝えました。

主な担当業務は、各店舗から商品の発注を受け、在庫がある工場に数量や納期を伝えるというものでした。特性上、仕事面で質問や相談があっても「聞くと迷惑になるのでは?」との思いから、周囲に声をかけたり相談したりできず、わからないことがありながら仕事を続けることで、不安は大きくなっていきました。
そのような中、仕事でのミスに対し、店舗の担当者からきつく指摘されることがありました。「なんで簡単な作業でミスするのかわからない」「真面目に仕事しているのか」と責められたこともあるようです。現在も就業は続いていますが、今後の不安が大きく、このまま就業を続けるべきか悩んでいる様子でした。

【解説】

この会社では、これまでも障害者の雇用・定着実績は高いものの、今回配属された部署ではこれまで障害者を受け入れた経験がありませんでした。また、部署内のメンバーは障害特性を理解していたものの、業務で関係する他部署には開示しておらず障害への理解がなかったことも、今回の原因と考えられます。会社として雇用実績がある場合でも、はじめて受け入れる部署への配属の際は、不安の把握や報告・連絡の徹底、上長・相談者のフォローといった取り組みや体制を徹底し、課題が見られた場合はいち早く対処するようにしましょう。

事例4. 繊細さや”べき思考”…障害特性への理解が十分でなかった例

ある小売業に就職した精神障害(うつ病)のある40代後半の男性は、前職で店長として接客を行ってきた経歴もあり、店舗に配属され、在庫管理などのバックルーム業務に従事することとなりました。その企業は、精神障害者の受入れ経験が豊富で、障害のある社員10名以上がはたらいていました。

配属された店舗のバックルームが非常に狭く圧迫感が気になったことと、障害を開示していたにも関わらず、指導員となる社員の指導の仕方や言い方など、コミュニケーション上の配慮が十分でなかったことに不安を感じ、当社キャリアアドバイザーに相談がありました。当事者と相談の上、心を落ち着かせられるよう、離職ではなくいったん休職して様子を見ることとなりました。

その後体調が安定してきたため復職することになったのですが、社内メールで自身を悪く言っていると疑ってしまうメッセージを発見してしまったのです。また、別のスタッフから、この指導員が自分に対して良くない印象を持っている噂を耳にしたこともあり、指導員やスタッフから疎まれているのではないかと感じ、退職を決意されました。

【解説】

このケースの原因としては、今回配属された店舗では精神障害者の受け入れ実績がなかったことに加え、会社としての雇用方針や雇用に取り組む温度感、配属となる方の障害特性や必要な配慮について、今回の配属現場に浸透させられていなかった事が第一に考えられます。
また、うつ病のある方には、言葉遣いのわずかな変化でも気にしてしまう繊細な方が多くいらっしゃいます。物事のあり方や進め方に対し、責任感の強さから「こうあるべき」という“べき思考”が強い方が多いのも特徴です。受け入れる企業や現場は、そうした特性があることを理解し、事前に情報共有しておくことを意識していただければ、休職や早期離職を防ぐことにつながるかもしれません。

ご参考:障害の情報をどこまで共有すべきか?

雇用した障害者の障害特性や必要な配慮に関して、配属部署へ共有する際に、どこまでの情報を開示・共有すべきか、チームメンバーにどのように理解をしてもらうべきか、判断が難しいという質問をいただくことがあります。

必要なことは、業務を遂行する上で支障となることは何か、と、そのための配慮の仕方を共有することです。業務に支障のないことは、必ずしも共有する必要はありません。配慮がないと業務を進める上で支障が出る可能性があることを周知した上で、配慮の具体的な内容を、雇用管理者からメンバーに説明しましょう。

開示・共有する際は、事前に障害者本人と相談し、開示の希望や承諾を得た上で進めます。障害名は個人情報となるため、本人が自ら開示する場合を除き、本人の承諾なく第三者から開示することはできませんので注意してください。

まとめ:細やかな雇用管理で職場適応・定着を実現する

障害者の雇用管理、特に入社・配属されて間もない期間は、障害のある社員が抱える“不安の種”をしっかりと把握し、すぐに対処することが大切です。障害特性への理解や必要な配慮がなされているか、業務量や業務進捗は適切か、体調変動のサインが出ていないか、不安を感じているかどうか、何に対して不安なのかを適宜、確認・把握し、素早く対処しましょう。

不安や相談事が発生した際に、相談できる担当者や窓口を複数用意しておくことも大切です。配属先ではメンバーや上長を相談先として決めておく。配属先以外に、人事部や、外部の支援機関にも相談できる体制を整えておきましょう。
早期退職を防ぎ、その後の職場適応と定着を長期的に実現するために、自社での取り組みを改めて考えてみてはいかがでしょうか。