中小企業、特例子会社の障害者雇用「優良企業」の取り組み例
―2019年度 東京都エクセレントカンパニー賞受賞例から―

東京都は毎年、障害者雇用を積極的に進め、特色のある優良な取り組みを行っている都内の企業を「エクセレントカンパニー」に選定し、表彰しています。
2019年度のエクセレントカンパニー賞を受賞・表彰された企業は以下の5社です。

  • 株式会社杢目金屋(もくめがねや)(渋谷区/木目金を用いたジュエリーの企画・製造・販売)
  • 株式会社新日東電化(大田区/めっき加工業)
  • 株式会社モンテカンポ(港区/ソフトウェア開発・検証事業等)
  • ジョブサポートパワー株式会社(立川市/事務処理請負、有料職業紹介事業等)
  • 株式会社ベネッセビジネスメイト(多摩市/クリーン事業・事務処理請負等)

今回はこれらの企業の特色ある取り組みから、主に中小企業と特例子会社が参考にできる雇用のポイントを考えてみます。
(参考:東京都産業労働局「障害者雇用 エクセレントカンパニー賞 受賞企業の取組事例集」)

中小企業の障害者雇用事例1:専門性の高い業務を分業・可視化

伝統的な木目金の技術を用いたジュエリー制作を行っている株式会社杢目金屋は、2019年9月現在182人の従業員がはたらいており、そのうち6人は発達障害や精神障害のある社員です。
専門性の高い業務を「可視化」「分業化」することで障害者がはたらきやすい体制を構築しているとして評価されました。

1. 「分業化」と「可視化(見える化)」ではたらける仕組みを構築

この会社では、一般的に10年はかかると言われている伝統技術やジュエリー制作のスキル習得を若者に担ってほしいという想いから、作業毎や工程毎に業務を「分業化」する仕組みを構築しました。それにより、障害のある社員でも担える業務を創出。現在では地金制作(研磨・加工)、検品、商品梱包・発送などの作業に障害のある社員が従事しています。

また、手順が複雑な作業を行う時はiPadを活用するなど、業務の「可視化(見える化)」にも力を入れています。動画で作業手順の確認ができるため、自ら業務を習得できているようです。

2. 障害のある社員の「やりがい」をサポート

障害のある社員が「仕事のやりがい」を感じられるよう、自身のスキルの程度が一目でわかる『スキルマップシート』を導入しています。面談の際にはシートを活用しながら4段階で自己評価をし、自身の成長を確認することで、モチベーションの向上につなげているようです。また、睡眠時間、食事、気分などを記録できる「セルフケアシート」も活用。障害者自身が健康状態の管理ができるようサポートしています。

その他にも、障害のない社員に対し、障害者とはたらく上で大切な知識を学ぶための講座の提供を積極的に行っています。職場全体の意識を高めることで、障害者がはたらきやすい環境を整えているようです。

中小企業の障害者雇用事例2:特性と業務のマッチング

東京都の京浜島工業団地にある株式会社新日東電化は、障害の特性と能力が活きるよう業務をマッチングさせながら、障害のある社員を正社員として雇用しているという点で高く評価されました。創業から43年、めっき加工業務を主に行っている同社では、2014年から障害者雇用に本格的に取り組んでおり、現在は総従業員130人のうち、13人が知的障害や精神障害、身体障害のある社員です。

1. 障害特性を考慮した業務のマッチング

この会社では、「障害者の特性」と「提供する業務」を適正にマッチングさせることで、それぞれが能力を発揮してはたらける仕組み作りに注力しています。例えば「部品をひっかける」作業では、同じことを繰り返すことが得意な社員に任せるなど、特性や能力に合わせて業務を提供しています。業務への適性を見極めるために、雇用前に5~10日間の現場実習を行っているようです。
現在は、めっき用の治具のフックに部品を引っ掛ける作業、部品を箱に収納する作業、めっきラインの立ち上げ、メンテナンス、生産管理、検査業務などに障害のある社員が携わっています。

2. 長期雇用を前提とした正社員雇用

大きな特色の一つに、障害者の雇用形態を「正社員」に一本化しているということが挙げられます。正社員として雇用することで、モチベーションや生活面の向上、職場定着などが期待でき、家族も安心して職場へ送ることができるとしています。
また、定年退職後の再雇用についても、2019年1月に就業規則を改正し、障害者も希望すれば70歳まで再雇用できるようになりました。特別扱いせず戦力として雇用することで、はたらく喜びや生きがいを感じられるようサポートしているようです。

中小企業の障害者雇用事例3:職務要件と賃金テーブルを明確化

2012年3月に設立された株式会社モンテカンポは、ソフトウェアの開発や品質管理などを行っている企業です。2016年から障害者雇用を開始し、現在は総従業員10名のうち、4人が精神障害のある社員です。

1. 職務要件・賃金表の導入 社員交流にも積極的

この会社では、2019年4月から職能要件を明文化した『職能要件・賃金表』を導入しました。それまで不明瞭だった障害者の評価制度や賃金体制を明確化させ、職務要件に合うよう賃金表を再検討し、全社員で共有するようにしました。結果、賃金の見直しにつながり、障害のある社員の意欲向上によい影響を与えています。

また、社内でのコミュニケーションを活性化させるために、考課に関するプレゼンに障害のある社員も参加する、ランチ会やレクリエーションを設けるなど、社員同士の交流の場を積極的に設けているようです。こうした取り組みにより、障害の有無に関係なく、全員が平等に一体感をもってはたらけるような環境が作られています。

特例子会社の障害者雇用事例1:在宅勤務導入 業務評価で在宅雇用者もキャリア向上可能

人材サービスなどを展開しているマンパワーグループ株式会社の特例子会社として、2001年1月に設立したジョブサポートパワー株式会社は、先進的なはたらき方を実践しているとして評価されました。現在は総従業員数143人のうち、135名が障害のある社員で、98名は重度障害のある社員です。

1. 従業員の半数以上が在宅勤務 制度に基づいた業務評価や目標設定も

ジョブサポートパワー社は、自力で通勤することが困難な重度の障害者を雇用するために、テレワークをフル活用した仕事環境を提供しているという取り組みが注目を集めました。在宅勤務者の自宅にLANを設置し、Skypeなどのツールを利用することで、オフィスの社員や他の在宅勤務者との円滑なコミュニケーションがとれるよう、ネット会議のシステムを構築しているそうです。そうした取り組みの結果、全従業員の約65%が在宅勤務をしており、「勤続5年以上の障害者が50名以上」という定着率の高さを実現しています。

また、在宅勤務者でも昇給、昇格ができる人事評価制度を構築していることも、大きな特徴の一つでしょう。在宅勤務者と会社側の面談は年1回、Skypeを通して実施されており、業務の評価や目標設定などが行われるようです。その他、eラーニングによる研修や在宅勤務者の業務グループでのリーダー・サブリーダーの設置など、障害者の先進的なはたらき方を実践しています。

特例子会社の障害者雇用事例2:複雑な業務の工程を組み立て直し、障害者の職域を拡大

株式会社ベネッセビジネスメイトは、ベネッセグループの施設運営などを行う特例子会社として2005年2月に設立しました。現在の総従業員数213人のうち、156名が障害のある社員で、27名が重度障害のある社員です。

1. 業務工程の改善で雇用拡大 学生の就労支援にも対応

さまざまな特性をもった障害者や中高年層の障害者など、雇用の幅を広げるために、複雑で難易度の高い業務工程や設計を見直し、ユニバーサルでシンプルな業務工程になるよう改善したことが評価ポイントと言えるでしょう。

地域や教育期間との連携にも力を入れており、特別支援学校や中学校などの生徒向けの実習、特別支援学校での出前授業、発達障害をもつ大学生のための就労支援などにも積極的に対応しています。

受賞企業の取り組みから学ぶ、障害者雇用「定着・活躍」のポイント

障害者の雇用拡大に向けて施策を打とうと考えている企業では、今回紹介した受賞企業の取り組みを参考にする際、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。最後に、中小企業や、これから雇用に取り組む企業に参考にしていただきたいポイントを、4つにまとめてご紹介します。

■障害者がもつ特性や得意・不得意(できること・できないこと)を把握し、その特性にあう業務を提供すること

専門性が高い業務や難易度の高い業務でも、業務工程の見直しや分業化をすることによって、障害のある社員が担える業務を創出できるでしょう。障害者がはたらきやすい環境を整えるために、IT機器やシステム、コミュニケーションツールなどの導入も効果的です。

■人事評価制度を整える

障害のある社員が仕事へのやりがいをもちながら、高いモチベーションで仕事を続けられるために、職務要件や期待する成果、評価軸や賃金表など、会社が求めていることを明確化し、障害のある社員と認識を共有するようにしましょう。障害があっても、仕事の成果によって正しく評価されることで、キャリアアップの機会やはたらく目標ができ、職場定着や活躍につながるでしょう。

■社内理解を深め、第三者機関との円滑な連携を図れる組織体制を構築する

社員に対して、障害特性や配慮に関する研修や教育制度、障害のある社員と交流できる機会を積極的に設け、社内理解を深めていきましょう。また、障害者雇用や就業における相談に対応する窓口を設置することや、外部の支援機関との密な連携体制を作っておくことも、障害のある社員の定着率を高める上では欠かせません。