精神障害のある社員が多くはたらく当社では、日々さまざまなことが起きています。社員の悩みや課題に向き合う、「田町(兼目白)のジョブコーチ」が障害者雇用の日常、また、課題にどう向き合っているか紹介します。35回目はかつて、一次面接をしていたときに思ったことを少し振り返りたいと思います。

障害者の採用条件、「転職は3回まで」より大切なこと

現在、田町(兼目白)のジョブコーチであるワタクシは、6年ほど前まで求人広告を作成するグループ企業の一つの部署にいました。俗にいう広告ディレクターってやつです。とはいえ求人広告というか求人原稿なので、いわゆるディレクター的格好良さというより、ライター的職人作業がメインの仕事でしたが…。「転職サイト」の広告を作るため、さまざまな企業に取材に行っていました。取材時には「採用条件」を聞くのですが、当時はだいたい「転職は3回まで」が主流でした。

そんな、なんとなくの「常識」を抱えて、当社パーソルチャレンジに異動して、しばらくすると1次面接の対応をすることになりました。最初は見習いとして同席だけ。その中で履歴書を見るのですが、転職回数の多さに驚いた記憶があります。「転職3回まで」という定説はもはや、自分の中から消えてしまい、逆に「転職は3回から」みたいに考え方が180度変わりました。「転職回数2けた」もそれほど珍しいことではありません。考えてみれば、そして同席させてもらった社員に教わったところ、精神・発達障害の方は、病気を治療するため、業務と特性が合わないため(判断を伴う業務が難しい等)、職場環境になじめなかったため(例えば大きい音が続く、光を発する環境等)、また他者とのコミュニケーションが苦手だったり、曖昧な指示に対応できなかったり……と、障害特性や体調の安定を実現させるため、また限られた条件の中から自分に合った職場を探すために転職を繰り返し、自分が自分らしくはたらける場所を懸命に探しているのです。
ですから面接では転職回数は特に重視していません。大切なのははたらく意欲があるかどうか、自己理解ができているか、そして安定的にはたらくために体調管理ができるかどうか。個人的には特に「はたらく意欲・熱意」をきちんと表現できるかどうかを重視していました。はたらく意欲やはたらいて社会に貢献したい思いがあれば、その思いを全力で支援したいなと思って面接を行っていました。

一人ひとりの頑張りに応える環境を用意する

ここのコラムをご覧の方は何かしら「障害者雇用」に関係がある方がほとんどだと思います。そんな読者の皆様にちょっと自慢気にお伝えしますと、当社には勤続5年、10年の精神・発達障害の社員が結構いる、ということです。この事実は、都内の障害者雇用担当者会議などで関係者に結構びっくりされたりします。そしてその次に「安定雇用のためにどんな努力をしているんですか?」という質問が続きます。このコラムの中でこれまで、早めの面談対応や支援機関をつけて二人三脚で課題に対応する方法を見つけることなどをお伝えしてきましたが、でも、一番の要因は何と言っても社員一人ひとりのそれぞれの頑張りなんだろうな、と最近思います。その「頑張れる環境」を会社が準備することが大事だと感じています。

当社の特徴はとても多くの業務があることです。パソコンでの入力作業などの定例反復業務や原稿制作といった非定型業務。清掃など体を動かす仕事もあります。また、ITスキルに秀でた社員はマクロを使ってツール開発などをしています。また、首都圏だと職場は田町、目白、池袋、横浜、大宮など複数あります。「複数の業務×複数の勤務地」の組み合わせが、それぞれの社員にとって心身ともに健康的にはたらけている環境に繋がっているのかもしれません。不調者が出た場合は、粘り強くフォローを続けることで、課題がどこにあるかが見つかり、そして、「どんな仕事が最適か」「どんな場所・同僚とはたらくのが最適か」という対応策が見えてきているのだと思います。医師の意見(支援機関や本人を通じて)、日々の業務の様子(直属上司の判断)、支援機関の客観的意見などを集めて対応策を慎重に判断しています。実際に業務を変えることによって体調が回復するだけでなく、見違えるようなハイパフォーマンスを出すこともあります。先日ある社員に「異動後は体調も回復し、とても仕事がやりやすくなりました。上司からの評価が高くなり、期待の言葉も貰いました。ありがとうございます」と言われました。ワタクシは何にもしてないんですけどね……。でも、そんな笑顔が、また1年、この仕事を頑張ろう!という気持ちにさせてくれます。さあ、新年度が始まります。