精神障害のある社員が多くはたらく当社では、日々さまざまなことが起きています。社員の悩みや課題に向き合う、「田町(兼目白)のジョブコーチ」が障害者雇用の日常、また、課題にどう向き合っているか紹介します。34回目は以前も紹介させていただいた、当社が行う「ユニバーサルワーク研修」について。

精神・発達障害者とはたらくためのマナーを伝える「ユニバーサルワーク研修」

特例子会社である当社は、精神・発達障害のある社員が多いことが特徴です。当社で起こる日常やマネジメントの工夫を、外部企業や個人の方々に伝えることができれば、より多くの精神・発達障害者の雇用につながるのでは、と始めたのが、精神・発達障害者とはたらくためのマナーを伝える「ユニバーサルワーク研修」。その最大の特徴は講師が精神障害者手帳を所持している当事者であるということ(ちなみに今年度は1000名を超える方に受講いただいています。ありがとうございます)。

日常生活や通常業務において、不安を感じやすい精神・発達障害の社員が、大勢の前で(いまは対面よりオンラインでの実施が多いですが)研修講師を行うこと、それは当事者講師にとっては勇気が必要なことで、また緊張もとても大きくなります。
当事者講師が1時間半余りの研修を安心して無事務められるように、いろいろと工夫をしています。その工夫自体が精神・発達障害者と一緒にはたらくためのヒントになるかもしれないので、今回紹介したいと思います。

急な不調や不安に考慮 当事者が安心して講師を務める工夫

まず、当日の講師ですが、必ず2名体制で臨みます。例えば遠方で行う場合も2名で現地入りします。オンラインで行う場合も会議室に2名で入ります。そのことで得られるのは「一人じゃないんだ、という心強さ」と「何かあったらいつでも代わってもらえる、という安心感」。たまたまた講師陣の3名は野球を知っているので「いざというときは途中降板もありだから」「ブルペンで肩をあっためて待機しているから大丈夫よ」などと話しています。
「当日の急な体調不良があった場合」も考慮しています。精神・発達障害の社員は、いつメンタルの調子が悪くなるか分かりません。「当日の急な不調での欠勤」は常に頭の片隅に入れています。また、2名体制にすることで、講師が「当日調子を崩すわけにはいかない!自分しかいないんだ!」というプレッシャーを緩和することにも繋がっています。

最近、行うようになったオンライン開催は、会議室でPCの前に座って講師を行うのですが、その反対側に、もう一人が座って、白い紙と太めのペンを準備。「カンペ」を使って、時間経過を知らせたり、ペース配分を伝えたり、素敵なアドリブが出たときは「今のナイス!」などと伝えたり。これが結構落ち着くというか安心するらしいんです。また、「どうしても最後までできないときや、交代してほしいときは、左手を机の上に出してください」と伝えています。そのサインを出したら、もう一人の講師が即座に交代することにしています。

といったように、まあまあしっかりとした準備をしています。では実際に講師が体調不良で欠席したことがあるかといえば、それはこれまで1度もありません。メンタルなどの体調不良による「途中交代」も、この2年間でわずか1回だけです。ただ、その1回も、事前準備が功を奏して不測の事態でもスムーズに交代ができて、研修受講者から特に不満の声は挙がりませんでした。また、「こういった配慮・準備を行うことが、精神・発達障害の社員と一緒にはたらくうえで重要なのです」ということを、実際に示せた、ある意味「好事例」になったと感じています。

適切な対応と、そのための事前準備を徹底する

今回、この原稿も「不調で交代したエピソードを書くことで、そのときの気分を思い出して気分が悪くならない?」と本人に事前確認しています。本人は「この事を世に発信して、理解が広まるのであれば、発信する意義はあるかと思います(もらったメール文面をそのまま書いています)」と言ってくれました。コラムの最後にきて当たり前のことを書いてしまいますが、実際に何かあった時の適切な対応と、そのための事前準備を徹底する。これは研修だけでなく、障害者雇用を行ううえで、最も大事な一つなのです、と断言して終わりにしたいと思います。あ、あと密なコミュニケーションによる信頼関係の構築、も当然大切ですので、お忘れなく!